泡立つ感情を水割りに 「2年前よりもっとすごいな、それ・・・!」 「ビーム出るんだろ!ビーム!」 「モチのロンよ!すげぇだろ、スーパーだろ?!もっと褒めていいんだぜ!」 「スゲェー!」 目をキラキラと輝かせながらフランキーの体をいじり倒している三人に、ため息をつきながら、サンジの作ってくれたサイダー片手に呆れる女子たちのもとへ向かう。俺もそれなりに男で、ロボとかには憧れはあるものの、あそこまでじゃないし。何しろあそこにいたらあいつら3人を蹴散らしてしまいそうだ。ああ、嫉妬だよ、悪いか。 「まったく、男共ってあれだから!」 「ふふ、混ざらなくていいの? ナマエ。」 向かってくる俺に気付いたのだろうロビンがにこやかに笑いながらパラソルの下で手を振る。この船の女子はなんか優雅だ。 「・・・いいや、なんか向こうのテンションについていけないし。」 相手をしてもらおうにもあそこまで囲まれてしまってはどうにもならないだろう。酒飲み仲間のゾロはこの炎天下の中、髪と同じ色の芝生の上でのんきに爆睡しているし、サンジは今の時間は昼飯の支度に忙しいだろう。 「俺も仲間に入れてよ。」 「いいわよ、ナマエなら。ちょうど退屈してたところだし。」 「3人なら何かもう少し会話の幅も広がるでしょうし、ね?」 三人で青いサイダーを喉に流しながら、くだらない話を卓上に並べる。基本的におしゃべりが好きな性質なものだから、必然的に話の通じないルフィやゾロよりもナミやロビンたちのほうが話が合い、それなりに話も盛り上がってきたところで不意にナミが俺に顔を寄せる。 「・・・どうしたの、そんなに俺をじっと見て。」 「ナマエって、案外顔整ってんのよね。勿体ない。」 「そうね、船大工さんには勿体ない・・・かもしれないわね。」 「えっ、アンタたちって付き合ってんの?」 「あの・・・えっ、ロビン?!」 「あら、今更隠すことないじゃない。」 私は全部知っているんだから、とロビンの能力で机から生えた腕からこちらを見る目。もれなくホラーなのだが、今はこう言われてしまえば観念するしかないだろう。 「・・・大声で言えないから、寄ってもらって良い?」 机の真ん中でこそこそと顔を合わせて2人に、付き合っているけど・・・と言ってみれば、ワッとナミが声を荒げる。 「えっ、ナマエ本当なの?!」 「ロビンに至っては、どっからバレたのか想像もしたくない。」 「・・・ふふふ。私は結構そういうの、理解ある方よ?」 「なにそれ怖い・・・って、うわっ。」 ぐいっと椅子に座っていたところを、上からぐっと持ち上げられた反動で椅子が後ろにがたんと倒れた。持ち上げた腕の主はもちろん。 「あら、お迎えみたいね?」 「・・・うわ、なんか嫌な想像しちゃったじゃない。」 「そうかしら。お似合いだと思うけど?」 ふふふ、なんて和やかに笑っているところ、誠に申し訳ないのだが持ち上げられた場所が服だったせいで、首がすごい勢いで締まっている。ギブアップ、と足をばたつかせてみるも目の前の女子達は気付いてもいないようで(ロビンに至ってはそれすらも楽しんでいる)持ち上げている本人に至っては、今は降ろすつもりはないようで、そのまま歩き出したため、もはや窒息寸前だ。 「っは、ギブ、首しまってっから!!」 「・・・もうちょっと我慢しろ!」 「・・・死ぬ・・・ッ」 バン、とフランキー自慢のアクアリウムのソファに投げ出されて、ようやく息をいっぱいに肺に吸い込んだ。新手の照れ隠しだと思っていたのだが、ドンと机に置かれた機械の腕に、こちらを睨む目はなんだか・・・怒っている・・・みたいで・・・。 「ど・・・どうした?」 「やっぱり女の方が良いのか・・・?」 「・・・え、フラン。どういうことだ。」 「だってナマエ、さっきロビンとキスしてたろ。」 そういわれて、首を傾げる。どのアングルでそう見えたのかは知らないが、たぶんこれは一枚ロビンに食わされた気がしてならない。きょろりと案の定、アクアリウムの中を見渡せば壁に耳、天井に目があった。むぅ、やはりロビンは侮れない。 「・・・内緒話を、していただけだ。」 「言えないことか?」 「いや、あいつらに色々、俺たちのことがバレたみたいってだけだ。」 「オゥ、そうか。なら・・・って良いワケねぇだろ?!」 泡立つ感情を水割りに 「・・・どうすんだ、ナマエ。」 「良いんじゃね、もう今更だって。あれ見てみ。」 天井できょろりと瞬きする目を見てフランキーがギャァなんて声を出した。きっと向こうは優雅に話のネタができたと談笑を続けているのだろう。 「・・・それはいいとして。フラン。」 「なんだよ、」 「服装については許容しているが、あまりほかの奴等に触らせるな。」 「・・・ハァ?」 素っ頓狂な声を上げたフランキーに笑いながら「俺も嫉妬くらいする」と言えば、ぼぼっと顔を赤くしたフランが、前より大きくなった体で抱きしめてきた。俺も少しだけ妬いた、と可愛いことを言う男ににこりと笑って口付けた。 back |