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イエスタディ,ワンスモア


(これ)の続編

「そうだ、俺達は付き合ってなんか居なかった。」

抱き合っている最中に、脇腹をドスンとやられた。指銃とかじゃないから、まだ俺は生きているのだが、やられた箇所が酷く痛む。

相手は仮にも中将だし、ドフラミンゴの所の幹部だ。鍛えてはいるものの、一般人と変わらぬ自分にとって覇気など伴わなくてもヴェルゴは俺より圧倒的な強者だった。

「騙したな、ナマエ。」

さぞ、面白かっただろうと蹴り飛ばされれば、助骨が嫌な音を立てた。それに気がつかないのか、わざとか解らないが、転がる俺の太もものあたりにヴェルゴはじわじわと体重をかけて圧迫してくる。

「いっ、」
「・・・・・・。」
「俺を殺したら、ジョーカーに怒られない?」

少し考えて、ヴェルゴは笑った。

「お前は良い商売人だったが、それだけだ。」
「へぇ、そりゃ、」

ドフラミンゴはそう言いそうだなぁ、と笑えばヴェルゴは顔をしかめた。何が不服なのかは解らないが、さっきより酷く怒っているようだった。

「ナマエ、お前の本心は何処にあるんだ?」
「さぁ、」

嘘ばかりついて来たから、どこからが真実で、どこからが嘘なのか自分でもよく解らないんだ。笑うとヴェルゴは「俺も、だ。」なんて言った。意味が解らないんだが。

でもひとつだけ。ヴェルゴが困惑している事だけはわかった。痛がる俺に眉をよせながらも、しゃがみ込んで俺が死なないか見ているのだから。

「騙した事については、悪いとは思ってる。」

騙して書かせた手紙で、さもヴェルゴが喜々として書いたように裏付けをして、疑問には用意した嘘を刷り込んだ。でも仕方ないじゃないか、正攻法では断られてしまったんだから。口以外に特に秀でて居ない自分には、それ以外の選択肢なんてありはしなかった。


「小細工してでも欲しかったんだ。どうしても。」

「馬鹿だな、」
「ああ。」
「・・・ばれた時の事は考えなかったのか。」
「考えた。でも、」

離れられなかった。

緩く口角をあげれば、視界には一面にヴェルゴの顔。

「ほら、殺るなら早くしろよ。あんまり痛くしないで一思いに頼む。」
「・・・何故だ?」
「何故って・・・?」


騙した俺を殺したい程、怒ってるんじゃないのか?と問えば、ヴェルゴは顔を手で覆って笑い出す。

「ナマエ、それなら俺はすぐに殺してる。」
「は?」
「騙された事には腹を立てたが、付き合っている事に別段不満は無い。」

そのくらい解れ、と差し出された手をとって起き上がろうとしたら、手を振り払われて地面に顔をぶつけた。あの野郎。

床にぶつけて切れたのか、鼻から口から滴る朱で、顔は凄い事になっているだろう。袖口でとりあえず拭って笑うヴェルゴの言葉を待てば、ヴェルゴは今までみた事のない程の笑顔で言った。


「不満は無いが、怒っては居る。」


イエスタデイ、ワンスモア


「ゴメン、」
「謝って海兵が全部赦すと、思ってるのか。」
「でも、お前海賊だし。」

というか海兵らしくないあくどい顔でそう言われても困る。しかも言って気付いたのだが、海賊の方が許してはくれなさそうだな。

「そのまえに、ヴェルゴはヴェルゴだろ。」
「簡単に騙されてはもうやらないからな。」
「ん、そりゃ困った。」

というか、どこから気付いていたのだろうか。今後の参考までに拝聴したかったが、今のこのタイミングで聞くのは本当に命知らずだと思い、大人しく口を閉じて切れた唇を舌で舐めるだけに留めおいた。

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