ショート | ナノ
自分勝手相対性理論


「ボルサリーノさん、過去に行ったことがありますか?」
仕事中、ふと思ったことを口に出して聞いてみると。
「・・・過去〜?何でまた。」
と、私に尋ね返してきたと言うことは、この人は過去に行ったことがない、と言うことで。
「いえ、何でもないです。」
そう言って、その会話を終わらせようとした。

何でもないって、言われて素直に引き下がると思っているのだろうか、この子は。
「ナマエちゃん」
「はい。あ、あとこの書類にも目を通してくださいね。」
そう言って、ちょっとした量のある書類をわっしの目の前に置いて、ナマエは先程のことは無かったことにするらしい。そんな彼女の望みを壊すかのように、わっしは口を開いた。
「なんで、あんなこと聞いたの?」
「え、やっぱりボルサリーノさん、無かったことにしてくれないんですか。」
「あったり前じゃないの〜。ナマエちゃん、何か抱えててそう言ったんじゃないの?」  
「・・・いや、別にそんなたいそうな事じゃないんですけど。」
とある学者が、光の早さで移動できたら、過去にも未来にも戻れる。って言ってたのを思い出したから、聞いてみたんです。と、言っている間に、目の前の山は急成長していて、ちょっと所では無くなってきている。こんなにわっしは溜め込んでいただろうか。と頭の隅で思いながら、今も山を成長させようとしているナマエに口を開いた。
「わっしさぁ、行ったこと無いんだよねぇ。」
「はい、さっきも言ってましたね、それ。」
そう言って、ナマエはまた器用にそれらを積み上げて、また山が少しだけ大きくなっている。
「でもね、実際行けたとしても、わっしは行かないだろうねぇ。」
そう言うと、「え!?何でですか!?」と驚いて、山を積む作業は一旦中止になる。
「だってさぁ。」


そんな自分の想対性理論
 

「ナマエちゃんの居ない過去に行きたく無いじゃない。」
「・・・・まぁ、私ボルサリーノさんより若いですし。私の居ない過去方が割合は多いと思いますけど。」
たまに、ボルサリーノさんの考えていることわかんないです。そう言って、ゆっくりと笑うナマエを見て、わっしも苦笑いを返した。


(・・・・もしかして、ナマエちゃんは鈍感って、いわれたことあるでしょぉ。)
(え?ないですよー。)
(あぁ、天然か。)


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