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否定、拒絶は認めません


「・・・美味い。」

一言零せば、隣でペンギンとシャチが賛同する。

「でしょう!昨日来てびっくりしましたもん!」
「そろそろウチにもコック欲しいです!」
「ああ、そうだな。」

注文したチャーハンをスプーンで突きながら返事をする。パラパラとした食感と食材の味のバランスが程よくとれて、絶妙である。さらに追うように口に二口目を放り込む。うん、悪くない。

「決めたぞ、おい。」
「何をです、船長。」
「コック、欲しく無いのか?」

スプーンを口にくわえて、あくどい顔で二人に言えば、二人は若干うろたえながら賛同を示した。

「そりゃ、仲間になってくれれば助かりますけど、了承しますかね?」
「まぁ、見てろ。」

スプーンをペンギンに向けて笑いながら、もう片方の手で店員を呼び止める。

「これ作った奴を呼べ。」

にたり、と笑えば真っ青な顔をして店員は大慌てで厨房へ走る。そりゃそうだ。何たって俺達はそこそこ名の知れた海賊だし、機嫌を損ねちゃ大事だ。

「え、もしかして、キャプテン・・・」
「欲しいモノは奪ってこそ、だろう?ペンギン。」
「・・・若干、そんな気はしましたけど。」

厨房から出て来たのは、思ったよりもがっしりとした体つきの男。そいつは清潔そうな白のエプロンにコック帽子を外しながら所在なさげに視線をさ迷わせていた。酷く怯えている様子なのはこの際気にしない事にする。

「あの、何か・・・?」
「これ、」

スプーンで、チャーハンを指して笑う。

「気に入った。」

そう言えば、男は少しだけぱっと顔を輝かせてこちらを見た。気に入ったのはチャーハンだけではないのだが、まぁいいだろ。

「毎日うちの船員分、頼めるか?」
「ええ、解りました。何人前ですか?」
「さぁ、船に戻らなきゃ解らねぇが。結構な数になるだろ。」

先に渡しておく、と手に金貨を握らせる。穏便にすめばそれに超した事はない。

「多い、です!」
「それは今回の食事代じゃねぇ。俺達は明日、この島を発つ。それまでに必要なモン買って来い。」
「えっ、」
「あと、俺はパンは好きじゃねぇ。覚えておけ。」
「どういう意味ですか?!」

混乱しているだろうコック相手にシャチとペンギンが同情の目で肩を叩いた。

「観念しろ、こうなったらキャプテンは手が付けられない。」
「あー、逃げると厄介だから気をつけろよ。」
「えっ、」

もぐりと慌てるコックを横目に食べ進めていたチャーハンの最後の一口を口に放り込んだ。

「明日からよろしく頼む。」



否定、拒絶は認めません

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