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掌の運命


皆が降りていった船を見渡せば、ふと目に付くのはカードの束。

「またか・・・。」

そう誰に言うわけでもないけど文句を言いながら、それらを手に取る。ああ、これがトランプとかだったら良かったのに。そう思いながら、我らが船長のタロットカードを見つめた。

他の船番の人に一言言ってから、船から降りてカードの持ち主を探す。・・・何というか、最近こう言う忘れ物が多くなっている気がする。この前なんて、武器を置いていってたし・・・新世界を舐めているんじゃないか、あの人。他にも上着とか・・・うん、考えるのやめよう。そうしよう。ホーキンスさんが忘れ物をした回数を指折り数えるのをやめ、捜すことを優先させることにした。まぁ、あの人の行く先は何となく決まっているから探すのは楽なんだけどね。

結局、酒場でのんびりお酒を飲んでいるのを発見。毎回毎回探しに来る私を労ってくれても良いんじゃないか。とか、変なことを思いながら、口を開く。

「ホーキンスさん。」
「ああ・・・ナマエか。もうそろそろ来る頃だとは思っていた。」

そう言いながら、こちらを振り返るホーキンスさん。それすらも様になる・・・って違う違う。

「あの!忘れ物です!!」
「知っている。」
「なっ・・・!し、知ってるって・・・!?」

そうさらりと言われてしまえば、私は少しプチッときてしまう。ということは、だ。この目の前で平然としているホーキンスさんは、置いていく気満々でカードを置いていったという事になる。

「今日は忘れ物をすると運気が上がるんだ。」
「どういう日ですか、それは。」

忘れ物って言うのは、最悪な日に付属する物だというのに、ホーキンスさんは『運気が上がる』と言う。それにしかも、忘れていったのは大事なタロットカードだし。本当にこの人に一般論って言うのは通じないんだな。だなんて思いながら、カードを渡す。

「ナマエ、悪いな。」
「そう思うんでしたら、こう言うことはやめてくださいよ・・・。」

他の船番の人が苦笑いしながら見送ってくれた顔を思い出しながら、私はそう呟いた。


不幸も幸運も紙一重 


「何かおれが忘れたら・・・お前が届けに来るだろう?」

何か悪いことをしたか?と言いたげな顔をするホーキンスさん。

「あー・・・いえ、何も、です。」

何となく、この人には一生勝てないんだろうな。だなんて思ってしまった。

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