ショート | ナノ
汝、日常を愛せよ


ラバナスタに着いたので、個人行動をする事になった。私はと言うと、買い物を終えてのんびり宿屋のベランダで外の景色を見ていた。そんな平和な昼下がり。外にいる二人組に目が留まった。一向に歩く気配のないその二人組を、私は見つめていた。そんな気ままな昼下がり。

取りあえず、武器などの調達を終えた俺は、宿屋へと戻っていた。
まだ太陽が上の方にあるから、みんな戻ってきていないと思いながら、廊下を歩いていると。ナマエの部屋から何か音が聞こえてきた。 

「なんだ。ナマエはもう戻っていたのか。」
せっかく町に来たのだからもう少し満喫すればいいのに、などと思ってしまう。だが、自分も余り人のことは言えないので、何とも言えないが。少し自分に対して笑いながら、自分の部屋の扉を開け、ベッドの上に体を沈める。

「はぁ・・・。」
ごろりと横になっていると、外から人の声がしてくる。それがいい子守歌として、自分を深い眠りへと誘ってくれていたのだが。

「あんたが悪いのよ!このろくでなしー!!」
この一言で・・・・目が覚めてしまった。 別に、外で言っているのならばそれでも良い。(良くはないが。)だが。

「なんでナマエの部屋から聞こえてくるんだ・・・?」
その声の主は間違いなくナマエで、あの言葉からすると誰かと居ることになる。 
「・・・もしかして、恋人、とかじゃないよな?」
自分で言ってしまって、自己嫌悪に落ちてしまう。

ナマエとつきあい始めたのは2ヶ月ほど前からだ。それ以前のことは知らないが、確か居なかったとか話していた気がする。と言うことは、俺とナマエが付き合った後に・・・いや、そんなわけはない。そんなそぶりはなかった。もしかしたら、ナマエは俺が構ってやらなかったばかりに・・・!? 嫌な考えは考えれば考えるほど、深みにはまってしまう。取りあえず、それが本当だったら・・・ぶっ倒れる自信はある。怒るよりもまず、謝らなければならない。そう思い、俺はナマエの部屋へと走り出した。

「あんた、あたし以外に彼女作ってたんでしょ!」
「違うんだ、誤解だよ!!」
「じゃぁ、この服に付いている口紅は何!?あたしというのが居るのに・・・なんて酷い男!!」

平凡な昼下がり、私ナマエはアテレコの真っ最中です。外にいる2人組の口パクに合わせて、感情を込めてやっております。(本当は、何でケンカしているのかは分からないけれど。)遊んじゃってごめんなさいね、2人組の方。そう謝りながら、私はアテレコを再会した。

扉をノックしようとしたら、ナマエの声が聞こえてくる。
「あたしというのが居るのに・・・なんて酷い男!!」
それを聞いて、俺は目の前が真っ暗になる。・・・やっぱり俺が悪かったのか? 一瞬入ろうか迷ったが、取りあえず、なんでなのか理由を聞きたかったので、震える手でノックをした。すると以外にも、ナマエはにこやかな顔で扉を開けてくれた。

「あーばっしゅ。帰ってくるの、早かったんだ。」
「・・・ナマエ・・・。」
その顔を見た途端、ナマエに抱きついた。

「すまなかったナマエ。だから・・・頼む。」
俺を見捨てないでくれ、とは言えなかったが、腕の中から声がした。

「あの・・・バッシュ?話が見えないんですけど。」
「・・・俺はナマエが幸せなら・・・別れても、いい・・・。」
「え、何の話してるんですか!?というか、バッシュが別れたいって言っても私は別れないつもりなんだけど!」
そう言って、あわて出すナマエ。俺はその言葉に対して、疑問を持ちながら答えた。

「しかし、君が知らない男と口論をしていたようだったから・・・。」
「えー・・・あー。もしかしてそれって、アテレコ、かな。」 
ナマエは青い顔をしながら、しどろもどろになりながら言う。
「・・・アテレコ?」
「・・・うん。外の2人組の口に合わせて、しゃべってたんだ。」
「「・・・・・・。」」


どうやら俺の不安は、勘違いだったらしい。
顔が赤くなっている自分と青くなっているナマエ。
そんなことを気にせず、外の人たちは活動していた。 
そんな中、俺は思った。


取りあえず、勘違いで良かった!!
 
 
「バッシュ・・・ごめんね。」
「・・・いや、その、すまん。」
それが何に対してかは分からないが、謝罪の言葉が出た。
その後、俺はナマエの耳元でこう呟いた。
「・・・頼むから、もうあの様なことは止めてくれ。寿命が縮む。」  
「あはは・・・ごめん。」
そう言った後、項垂れてしまったナマエの頭にキスをする。そうすると、どんどんとナマエの耳が赤くなるのを見て、俺は苦笑しながらナマエを離さないように力強く抱きしめた。

その時ほど俺は思ったことはない。
平和で普通な日常が一番だと。


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