木漏れ日の中で たった一言。そう、たった一言なのだ。しかし、その一言が伝えることができない。ヴァン達と笑っているナマエを見て、俺は苦笑いをした。 『たった一言伝えるのが、こんなにも辛いなんて思わなかった。』 そう、使い回されたような言葉を呟く。こんな気持ちにならなければ、こんなにも悩まずにすんだものを。 私たちはモブ退治をしに、今オズモーネ草原にいる。退治しに来たのは良かったのだが。モブがなかなか出てきてくれない。それの鬱憤を、近くのモンスターへ八つ当たっている。(のかは知らないが、私にはそう見える。) 「あいつらには、何にもかんけーないのにね。」 それを見ながら呟く私、ナマエ・ナマエは何をやっているのかというと、ただ、草原にごろごろしているだけ。 こんないい天気にのんびりしないなんて、本当にどうにかしている。ふと時間を見たらもうそろそろ3時。暇なときは寝ている時間だ。道理で眠たいのはずだとぼやきながら、私は空に手をかざす。空は近くにある木の枝や葉で、所々にちらほらと見えるだけ。そこから光が差していて、当たっている所だけは体温とは違う暖かさが。そしてたまに風が来て、枝や葉が音を鳴らして光の形を変えていく。その音だけでも私にとっては、夢の国に旅立つのには申し分のない子守歌。 『あぁ・・・・眠たくなってきた。』 うとうとしかかっていたら、HPゲージの所が緑色な彼らが居た。(彼らなのか知らないが) 「キュー?」 「・・・オズモヘアか。可愛いな、凄くモフモフしてる。」 そう言いながら触ってやると、もっと触って欲しいのか、すり寄ってくる。 「私の名前はなー。ナマエって言うんだ。」 そう言って、愛くるしいウサギと戯れているときだった。いきなり視界が暗くなる。目の前に誰か居るのだろう。顔を上げると。 「・・・バッシュ?」 太陽が発する光りと同じ色をした人が、私の前に立っていた。 「ここに来てはいけなかったかな、ナマエ?」 「いや、そうではないんだが・・・。」 そう問いかけた私に、ナマエは曖昧な返事をした。 なので『駄目なら、駄目で良いんだぞ?』と言った俺。そう言ったら、君は何も言えなくなってしまうのを知りながら。 (しかし、駄目って言われたらどうしようかと、どこかで焦っている俺が居る。) 俺の問いにナマエは、何も言わず首を横に振る。(ほらやっぱり、君は優しすぎる。) 「ただ、バッシュは八つ当たりに参加しなくて良いのかな・・・と思って。」 「八つ当たり?・・・あぁ、あれのことか。」 ちらりとヴァン達の方を見る。(八つ当たりに見えるな。むしろ、八つ当たりをしているのか・・・?) 疲れたと答えれば、君は笑って『そうだよねぇ。』と答えた。 「こーんないい天気で、戦いたいとも思わないよ。」 そう誰とも無く呟きながら、満足そうに空を見上げるナマエ。ただ何も言わずに見ていた俺に、そう言えば、と話を切り出した。 「そう言えば、バッシュって好きな人居るの?」 「・・・・・・は?」 ナマエ、いきなり何を言うんだ?(俺は耳に異常・・・あったっけ?) 「いや、だから居るのかなぁって。」 「・・・またなんでいきなりそんなこと。」 激しく動揺しているな。俺。 そんな俺をよそに話を続ける。 「ヴァン達が、そーゆー話をしていたから。」 (無性に、主人公とか言っていた人物を恨みたくなったのは、俺の気のせいか?)どうせ、後で、なんて言っていたか聞こうとかそう言う算段なのだろう。(一瞬、銃を持っている男が笑った気がした。これは多分気のせいではない。)まぁ今は、気持ちを伝える機会が出来たということにしておこう。 「・・・まぁ、居ることには居る。」 「え、誰?」 そう言って、寝ころんでいたナマエは起きあがる。すると、ナマエの背中に乗っていたオズモヘアが転げ落ちていく。あれでHPゲージがオレンジになったら、オズモヘアは短気だな。とか、俺は変なことを考えていた。ナマエが目の前にいて、俺を落ち着かせようと思ってのかも知れない。まぁ、落ち着いていないが。 「・・・・もう重傷だな。」 そう一言呟いた。(隣で『モゥジュウ・ショウさん??』と呟いていた。) あぁ、そう言えば好きな人を言うんだったな。俺は、君にしか聞こえないように耳元でささやく。 「 」 そう言って後、私はオズモヘアをナマエから遠ざけて隣で寝ころぶ。隣にいる君は、顔を真っ赤にさせていて、そして。 君はとてもとても暖かくて 君が私の名前を呼んだとき、自分は再確認してしまったのだ。君が本当に好きだと言うことに。 back |