赤は止まれ 「ナマエ、おい。」 「何?こんな夜中に。」 いきなり起こされて目の前にあるのはあの男の顔。枕元の時計を掴み、たぐり寄せてみると時は2時をすこし過ぎたくらいだった。 「うわぁ・・・まだこんな時間なのに起こすかなぁ、普通。」 ありえない、なんて一人愚痴ていると頭を軽く撫でられる。 「悪ぃ、コックピットの鍵のスペア貸せ。」 そう言う彼の体臭は無駄な色気を含んだラエルト・フレールのよう。 「今日も飲んできたって所だね、どう見ても。」 やっと慣れてきた目で彼を見ると、胸元ははだけているわ、髪は乱れているわ。 アルコールに混ざってかすかに香水の香り、挙げ句シャツにベタに口紅つきと来たものだ。 「あぁ、やっぱりワイン生産の地だけあって美味しくて、な。」 (だとしたらその口紅等はどう説明するんだろうか。まぁいいけど。)ベッドから起きあがり、棚の引き出しから鍵を取り出して渡す。 「てゆうか自分の部屋は?」 「ばぁか、あったらお前の所来るかよ。」 「だってフランっ・・・!!」 あんたには相棒のフランがいるじゃないか、といいかけて飲み込む。 「フランはちゃんと部屋に鍵かけて寝てるんだ。お前と違ってな。」 「はぁ、そんで何で部屋の鍵ないのさ。」 バルフレアは一呼吸おいてから一言。 「落とした。」 「はぁぁあ・・・・むぐッ?!」 いきなり鼻と口を一気に手で塞がれる。 「大声出すなって、みんな起きちまうだろうが。」 〈ギブ、ギブアップ!!〉 ばたばたと手で抗議する。両方塞がれたら呼吸なんて出来やしない。 「ああ、つい。」 「・・・っば、か!!」 少しもそう思っていないのはにやついた顔でわかる。 「それじゃ、コックピットで寂しく寝る人に差し入れ。」 顔めがけてクランケットを投げつける。 「ってめ!!馬鹿野郎!!」 「女たらしに言われたくないです。」 バルフレアが何のことだかわからず目を丸くする。 「それ。」 彼のシャツの赤い印を指さしながら笑う。 「女に惑わされて鍵忘れてきましたとか、らしくないよ色男?」 「言わせておけばお前「あー、あー、あー聞こえなーい」 まぁ多少妄想入っててもあながち間違ってはいないから、あまり反論もできないのだろう。 「それじゃ、おやすみ。次からはちゃんと鍵かうのでよろしく。」 「待てよ、ナマエ。」 「なんだよ、もう寝るよ?」 「言っておくがな、今回は誰も口説いてないぞ。」 「そう、それが?言い寄ってきたってことはさぞモテるって自慢かい?」 「俺はな、今、本命がいるんだ。」 その一言にすこし驚いた。こいつは特定の恋人なんて作らないと思っていたから。 「へぇ。ということはその人といちゃついてた、と。惚気話は間に合ってます。」 耳を塞いで布団に潜る。バルフレアと誰かの、なんて聞きたくないし。 「俺の好きな奴はだなぁ・・・まぁ、気長に待つさ。」 最後の言葉にドキッとするのは私も一応女だからなのかもしれない。 チカチカ点滅する赤色 危ないと知らせるサインに気づいているのに back |