ショート | ナノ
赤い太陽


「ルートヴィヒ・・・暑い。」
そういって、うだっている私を見て一言。
「その格好じゃ暑いだろ。」 
「そうですねー。」
「ナマエ。それなら脱げば「絶対いやだ。」・・・。」 

「ルートヴィヒ・・・そんな不満そうな顔をしなくてもいいと思うよ?」
「・・・・・。」
そういっても、ルートヴィヒは眉間のしわを取ってくれない。その様子を見て、私はため息をつく。嗚呼、何でこんなことになってしまったのだろうか。
そもそも、日本が海に行こうといったから・・・こうなったような気がする。

「暑いですねぇ・・・そうだルートヴィヒさん、ナマエさん。これから海に行きませんか?」
「ん、海か。ナマエ、行くか?」
「・・・水場!!!行くよ、当たり前じゃないか!!!」
って・・・言うような事があって来たんだけれど。

さすがに裸はやめてほしい。(日本なんて、走り去ってしまったよ。)
「ルートヴィヒ、今なら露出狂になれるよ!?」 
「俺は、暑かったら脱げば良いと言っただけなんだが。」 
「・・・半そで半ズボンじゃないと、生きていけないんです。」

そういうと、ルートヴィヒはふと思い出したかのようにこう言う。 
「そういえば、お前水着着てただろ?」
「・・・・。」

その言葉に私は止まる。(いや、着てきたんだけどね。お腹がめちゃくちゃ露出するものだから・・・。)

「・・・キテキテナイヨ?」
「着てきたんだろ?なら、水着になれば良いじゃないか。」 

・・・なんでだろう、そう言うルートヴィヒがすごくキラキラしている様に見える。そう思いながら、仕方なく服を脱ぐことにした。

「お腹がぁ、腹がっ!!もう駄目だ、服に着替える!」 

水着になったけれど、ルートヴィヒが何も言わないから耐え切れずそう叫ぶ。こんなことなら、お腹が出るやつ着てくるんじゃなかった!!そして、服を取ろうとしたとたん、ルートヴィヒが慌ててこう言う。

「ちょっと待て!!大丈夫だ、ナマエ。すごく似合っている、だから服を着るな!!」
そう言われると、ルートヴィヒがすごくあれに見えてきて、思ったことを口に出してしまう。

「ぎゃぁぁぁぁっ、ルートヴィヒ変態!!」
「何が変態なんだ!!似合っていると褒めたら、お前の思考回路は変態に行き着くのか!?」
「行き着くわけ無いじゃん!!違うって・・・ん、あれって?」

ふと、海の中に見覚えのある色と形が見えた。
私は近くで見たくて、よく見えるところまで走ることにした。
「っおい、ナマエ!?」
ルートヴィヒの声が聞こえたけれど、気にせず走った。

透明な青色が、光に揺られて反射している中に、薄い桃色の物が見えた。
「やっぱり。・・・珊瑚だ、きれいだなぁ・・・。」
ここの海は綺麗だったから、チラッと見たときはもしかして、と思って走ってきたけれど。

「やったね、正解正解♪」 
「・・・いきなり走ったと思えば、珊瑚があったからか。」
「うえぇっ!!」
いきなり後ろから話しかけられて、びっくりしながら見てみるとそこのはルートヴィヒがいた。 

「・・・ナマエ。俺がいたら駄目なのか?」
「・・・そうじゃなくて、背後からいきなり声がすると誰でも驚くって。」
そう私が言うと、不思議そうに首をかしげる。

「あ、そうですか。ルートヴィヒは特別なんだよ。」
「ナマエ、俺はまだ何も言ってないぞ!!」
そう言うけれど、絶対『俺は驚かないが?』とか言うつもりだっただろ。とか何とか思いながら、珊瑚を見つめる。

「・・・そういえば、最近珊瑚なんて見かけなかったな。」
「うん。ルートヴィヒもそう思った?・・・やっぱり温暖化かなぁ?」 
そう言うと、ルートヴィヒは妙に反応する。(そう言うことには敏感だからなぁ。ルートヴィヒって。)そんな様子を見ながら、自分が思ったことを話す。

「だって最近、氷が溶けてきているんでしょ?」
「あぁ、南極の氷のことだな。ほかにも温暖化が進んできて、いろいろ変わってきているらしい。」
「・・・そうなると、珊瑚たちも消えてしまうのかなぁ・・・?」

そう言うと、一瞬ルートヴィヒが話すのをやめて、珊瑚を見つめる。 
「この光景も・・・消えて、しまうのかもしれないな。」
未だ、ルートヴィヒは珊瑚を見つめているけれど、その目は少し悲しそうで。

「ルートヴィヒ、何とかできないのかなぁ。」
「ナマエ、それは俺にもわからないな。」

ただ、一つだけわかることは。今も少しずつ破壊の手がじわじわと伸びていること。そしてルートヴィヒと私は何も話さず、見守るように珊瑚を見つめていた。波の光で、色の濃淡が少しずつ変わっていく珊瑚たちを。そうしていると、ルートヴィヒがふと口を開いてこう言った。

「ナマエ。・・・綺麗だな。」
そう言うルートヴィヒに、私も頷いてつぶやく。
「うん。綺麗だね。」


それは、海が伝えたかったメッセージ


「温暖化か・・・これ以上暑くなったら、お前が溶けそうだな。」
そしてふと、さっきの事を思い出すようにルートヴィヒは呟いて、顔をこっちに近づけてきた。

「ほら、熱い。」
その声が聞こえるぐらいに、口に何か触れた気がした。


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