ショート | ナノ
ココロの縮尺


ルートヴィヒは読書中で。私はそんなルートヴィヒの邪魔にならないように、適当にあった雑誌を読む。特に気になるページも無く、ぺらぺらとめくっていたとき、気になるコーナーが。

「・・・・ねぇ、ルートヴィヒ。」 
「ん。」

そういって、ルートヴィヒは自分が読んでいた本を閉じて私を見る。(ごめんね、邪魔して。) 

「・・・で。どうかしたのかナマエ。」
「うん、あのさぁ・・・・。」
「『貴方は今洞窟にいます。洞窟の奥には水溜りがあります。さて、その大きさはどれくらい?』・・・さぁ、答えよ!!」
 「・・・マテマテマテ。俺には今、どうしてこうなっているのか、全くわからないのだが。」

そう言われてルートヴィヒのほうを見ると、すごく困惑しているルートヴィヒの顔が見えた。

「うわぁ・・・・すごく珍しい顔を見ちゃった。」
「そこか!?お前の判断基準はそこなのか!?」 
「うん、そこだ。」
にこやかに笑いながらそう言うと、ルートヴィヒは困った顔をしてこっちを見る。

「ナマエ・・・俺は、それにどう反応したらいい?ここは怒った方がいいのか?」
「うーん、ナマエさん的には・・・怒らずに心理テストに答えてくれると嬉しい。」
「おい、ナマエ。」
ちょっと眉間に皺が寄りがちなルートヴィヒに、私はにこやかに笑って返事を促す。

「さっきの洞窟が・・・とか言っていたのは、心理テストだったのか?」 
「うん。」
「・・・ナマエ。俺は一言もそんなこと聞いていないぞ?」 
「うん。だって言ってないんだもん。」
「・・・・。」
「・・・・。」

しばらくの沈黙の後、ルートヴィヒが口を開いた。
「お前は主語がないとは思っていたが・・・・。」 
少しため息をつきながら、ルートヴィヒはまた話し始める。 

「さっきの内容、もう一度言ってくれ。」
それは、付き合ってくれるという事でいいのかな?私はにこやかに、さっき目で追いながら話していた文字を、もう一度口に出した。

「・・・こんなもんか?」 
手と手の間を肩幅くらいの大きさにしながら、ルートヴィヒは言った。(というか、私に聞かないで欲しい。)

「そんな大きさ?」
「本当なら、もう少し小さくしてやりたいところだ。」
「・・・どれぐらい?」
そう聞くと、ルートヴィヒは15cmほど間隔を狭くした。

「狭っ!!」 
「ナマエ・・・悪いか?」
「いや・・・うん。」 
そんな曖昧な答え方をする私に、ルートヴィヒは訪ねる。

「で、何がわかるんだ?」
「・・・ルートヴィヒ。私はどんなルートヴィヒでも、大好きだから・・・・・ね?」
「な・・・・いきなり何を言い出すんだナマエ。」 

少し顔が赤くなるルートヴィヒに対して、私はどんどん顔が青くなる。答えを聞いても、怒らないでねルートヴィヒ。私は、腹をくくってその答えをつむいだ。 

「・・・実は・・・その水溜りの大きさは、その人の。・・・つまりルートヴィヒの心の広さを、表しているそうで・・・。」
「俺の心の広さは?」
「・・・あ・・・あまり広くは、無いって・・・ナリマス。はい。」

実はもう少し、心が広いと思ってました。(失礼だけど。)だから、こんなことになるなんて思わなかったんだよ!! というか、誰だあの雑誌に心理テストなんて載せる人は!! そうしていると、ルートヴィヒがこっちに近づいてくる。

「あわわわわわわわわわ・・・ごめんなさい。いや、本気で。」 
「・・・ナマエ。」
謝っても、どんどん近づいてくる。(本気で怖いです。)
「悪いのは、この雑誌なんです!!・・・あ、すみません、自分です!!!・・・だから!!」
そう言っていると、ルートヴィヒは自分の目の前で止まる。

「・・・ルートヴィヒ?」
怖いけれど、ルートヴィヒを見上げる。 
「ナマエ。それだけで俺が怒ると思ったのか?」

見上げてみると、苦笑するルートヴィヒの顔が見えた。
「え・・・だって、心が狭いって言われたから怒るかと思った。」
そういうと、ルートヴィヒはクスリと笑ってこう言った。
「心理テストで人の心が全て測れるわけじゃない・・・と俺は思うんだが。」
「まぁ、そうかもしれないけど・・・。」
逆に、全て測れたならばすごく怖いだろうし。そう思っていると、いきなり目の前が全てルートヴィヒ一色になる。(目がすごくきれいだなぁ・・・とは言えない。)

ルートヴィヒの顔が離れていくと、自分が何をされていたのかやっと解った。自分でも鈍いとは思っていたけれど、ここまでだったとは思わなかったりする。

「な・・・何をするのさ!!」
「何って・・・ナマエに伝えたかっただけだ。」
「なにを?」

「たとえ心が狭かったとしても、君を想う思いはとても深いということを。」 


ココロの測り方
 

そう言うルートヴィヒは、悔しいけれど結構格好良くて。(恥ずかしいけれど。)でも、やっぱりどんなルートヴィヒでも好きだと思える私は、重症なのかもしれない。


  back