退屈なんか感じない 「うーん。伸びたなぁ。」 鏡に映る自分を見ながら、髪を触る。 10pぐらい切りたいと思い、私は隣の部屋で新聞を読んでいる人を呼ぶ。 「ルートヴィヒー。」 そう言うと、ルートヴィヒがパタパタとスリッパの音を立てながら、近づいてくるのがわかった。そして、鏡に映ったルートヴィヒの顔を確認すると、私はにこやかに笑ってこう言った。 「髪、切ってほしいな。」 肩にタオルを置き、その上にケープをかぶる。 そして、髪を切りやすくするために霧吹きで髪を濡らしておく。 「ナマエ、どの位切るんだ?」 「うーん・・・肩につく位?」 そう言うと、結構切るな・・・。とルートヴィヒが呟く。(話していても、手を動かしているルートヴィヒはすごいと思う。)それを聞いて、いけないのかなぁ?と思っていると、無言で櫛を動かしていたルートヴィヒが口を開いた。 「いや・・・その、切ることがいけないと言うことでは無くてな・・・。」 「?」 「ナマエの髪は・・・綺麗だからな。勿体ないな、と思っただけだ。」 それを聞いて、髪を切るのを止めようかな・・・とか考えたけれど、髪を切って貰うことにした。その言葉は嬉しかったけど、ルートヴィヒが自分の髪を切ってくれるのが嬉しかったりする。まぁ、そんなことは言わないけどね。どんどんと頭が軽くなっていくのを感じながら、ぼーっとしていると頭の上から声がした。 「ナマエ、退屈じゃないか?」 「・・・それって私の事かな?」 「俺が知っているナマエって言う名前の人物は、お前しか居ない。」 「あ・・・そう。」 ルートヴィヒ、友達少ないのかなぁ・・・とか、そんなにナマエって言う名前珍しかったっけ?とか考える。 「ナマエ・・・お前は何を考えてるんだ?」 「!!・・・・えぇっと・・・。」 ルートヴィヒの言葉に動揺しながらも、何でもないと答える。そうすると、ふぅん。と言いながら手を動かす。切りそろえているのだろうか、たまにハサミの音がしなくなるのがわかる。 「ルートヴィヒって、ホントすごいよね。」 髪の切る音を聞きながら、何でもないように答える。 「何でも出来て、羨ましい。・・・実は空も飛べるんでしょ?」 「・・・・ナマエ、それは俺でも無理だ。」 そう呟いたルートヴィヒは、どうせ困った顔でもして居るんだろう。困らせるのはあまり好きではないけれど、ルートヴィヒなら別にいい気がする。とか考えながら、また髪を切るハサミの音を聞く。(そう言えば、どれだけ几帳面なんだ・・・・A型?)何も音がしない部屋に、ジャキジャキという音が響くのが少し心地よい。 「・・・ナマエ、前髪も切るか?」 「あー・・・どうしよう?切ってくれるの?」 いつの間にか、後ろ髪が切り終わったらしい。 「ついでだ。・・・まぁ、ナマエが良いというならばの話だがな。」 「別に良いよ。少し邪魔だったし。」 のんびり答えながら、私は目に髪が入らないように目を瞑る。瞑った後、ルートヴィヒの手が私の髪に触った。 「少し、時間がかかるかもな。」 「・・・それってどういう意味?」 「前髪はよく見るところだからな。」 それは、後ろ髪以上にこだわって切ると言うことだろうか・・・。 「ナマエは暇だろうが・・・すまんな。」 「大丈夫だよ、ルートヴィヒ。」 「?」 ルートヴィヒが話さないので、私は目を開ける。目の前で困った顔をしているルートヴィヒを見て、少し笑えたが、あえて顔に出さずに口を開く。 「私が退屈するわけ無いじゃない。」 「何でだ?」 そう言うルートヴィヒに、私は顔を近づける。 「だって、ルートヴィヒがいるからね。」 にこやかに笑って、ルートヴィヒの頬にキスをする。 「んなぁっ!?」 そう叫び驚くルートヴィヒを見て、私は思った。 こういう退屈は 大歓迎!! 「・・・ナマエ。適当に切るぞ。」 「・・・すみません。それだけは勘弁してください。」 そう言って脅すルートヴィヒだけれど・・・。 (妙に嬉しそうなのは・・・私の気のせいかな・・・?) back |