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君の笑顔


「ねぇルート笑ってみてよ?」
「なんでだ。俺はいつだって笑みを絶やしたことは無いぞ?!」
「「本当?!」」
ルートヴィヒの言葉にフェリシアーノと菊は唖然とする。
フェリシアーノがぐい、とルートヴィヒの頬を引き延ばす。
「ルート、嘘だよね?ちゃんと笑ってから言おうよ〜。」
日本は慌てながらもこちらの様子をうかがっていた。明らかに不信がっていた。
「俺は・・・そんなに怒ってるように見えるか?」
その言葉に二人は押し黙ってしまった。
「怒っている・・・っていうより、無表情っていうか・・・」

***

その事で相談しに来たルートヴィヒを横目に大笑いする女の子が一人。
「それ、本気で言ってたの?」
お前もか・・・と項垂れるルートヴィヒに彼女は続ける。
「いや、ルートヴィヒらしくて良いと思うよ?誉めてないけどね。」
「お前も俺が笑ったところ見たこと無いとか言うんじゃないだろうな。」
「あるよ?みんなより表情に出ないだけで。慣れれば見分けつくし。」
その言葉にルートヴィヒはそうか・・・と一言だけ零した。
「ただでさえ威圧感あるんだから、少し周りにも解るように笑うことも大事かもね。」
頭を掻きながら低い声を上げるドイツのおでこを指ではじく。
「何しょげてるの!!笑う練習しましょう。そのために私の所来たんでしょう?」
「あ、ああ・・・。」
弾かれて鈍く痛む額を押さえながらルートヴィヒは呻くように答えた。
「取りあえず、顔の筋肉を動かして笑ってみて?」
「両頬を持ち上げる感じで」なんて言いながらルートヴィヒの頬を伸ばす。
「いひゃい。」
「うん、その感じを忘れずに、今度は自分で笑ってみようか!!」
そう言うと、ルートヴィヒはにやり、と黒い笑みを返してきた。
「それ、わざと?」
「・・・コレは駄目か?」
それがわざとじゃなくて本気で言ってるのだったら重症だ。
しかも、ルートヴィヒはそれは明らかに後者である。
「うん、ごめん。今のはナシ。その笑顔は黒すぎる。逆に怖い。」
ルートヴィヒはその言葉に激しく落ち込む。
「とりあえず、笑いの基本を押さえればどうにかなる!!」
「基本って何なんだ・・・」
「口元を上げる。力まずリラックスする。目元を下げる!」
「すごいたるんだ顔にならないか、それ・・・」
ルートヴィヒは言ったが、そもそも笑顔っていうのは崩れる一歩前の顔である。
「後はとにかく、楽しいことを考える。まぁ良いからやってみて!!」
「多分、総合的に・・・こんな感じか?」
ルートヴィヒは目の前の自分に向けて笑いかけた。
その笑顔がいままでみた笑顔の中で特に輝いて見えたのだ。
「ねぇ、ルート。もう笑うの諦めたら?」
「なんでだ、これもやはり駄目か?」
うーんと考え込んでしまったルートに言えるわけがない。
ふと目があった、彼にうっかりときめいてしまったなんて。
「どうしたんだ?顔赤いぞ。風邪か?」
「もう、ドイツは笑ったら駄目!!」


君の笑顔は私のもの


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