ショート | ナノ
Sweet Apple


久しぶりに休暇をもらったので、私はギルベルトの家へ遊びに行こうと、ふと思った。
なので早速、遊びに行く了解をメールで送ると、すぐ返信してくるものだから暇なのだろう。
【仕方がねぇから、その日空けといてやるぜ!!】
来たメールを見た瞬間、危うく自分の携帯を壊しそうになった。
・・・もう遊びに行くのやめてやろうか。

約束の日の当日、私は時間の30分前に来ていたはずなのに、ギルは家の前でもう待っていたのに驚いた。
・・・よっぽど暇なのだろうか。
「何だよナマエ、格好いい俺様に惚れ惚れしちまったか?」
「時間、10時だったよね?」
「あぁそうだな。」
「何時から・・・待ってたの?」
「さぁ、知らねぇ。」
その言葉を聞いて、不憫だ・・・。と呟いた私は間違っていなかったと思う。

ギルの家に遊びに来たのは良いけれども、彼の顔を見に来たかっただけで、特に何かをすると言う事が無かった。
「なぁギル。書斎ちょっと貸せ。」
「は?」
「いや、特に用事とか無かったから、暇だし。」
「ナマエは、書斎で何するんだ。」
そりゃぁ、読書でしょう。
そう呟けば、彼は慌てながら私を引き留めようとする。
「ほ、他に何かすることあるだろ!」
「・・・何かあったっけ?」
そう冷たく言うと、ギルがちょっとしょげながら、「1人楽しすぎるぜー!」と言い始める。
それを見て、私は苦笑しながら台所へ向かった。
「特に何もすること無いから、珈琲でも飲んで、ゆっくりしますか?」
「・・・!!・・・そーだな、仕方ねぇなぁ!ナマエがそう言うなら、一緒に飲んでやっても良いぜ!」
ケセセセと笑う彼が嬉しそうだったので、何も言わずにポットを火に掛けた。

私が淹れた珈琲と、ギルがどこからか持ってきた(ルートのじゃないよな・・・?)林檎のお菓子を机に並べてのんびりと過ごす。
こんなにもゆっくり出来たのは久しぶりな気がする。
「あー。落ち着く。」
「なんだ、そんなに大変なのかよ?」
「うん、今景気悪くてさ、おちおちゆっくりしてられないんだよね。」
他の所も大変なんだけどね。
そう呟けば、ギルはふーんと聞いているのか聞いていないのか、分からないような声を出して、珈琲を飲む。
その様子を見ながら、ふと、今沸き上がった疑問を彼にぶつけてみた。
「いま、思ったんだけどさ。」
「おう。」
「林檎を食べたアダムとイヴは幸せだったんだろうか?」
「は?」
ナマエどうした?と訊ねてきたので、だから今思ったんだって。と言い返す。
「だってさ、住んでいた所から追い出されたのだから、辛くなかったんだろうか。」
「・・・そりゃぁ辛かったんじゃねぇか?」
でもよ。と続けるギルを見る。
「1人じゃなかったから、良かったんじゃねぇ?」
「・・・どういうことさ。」
そう聞くと、彼は私の頭を肩に寄せた。
「だから。2人だったら、どんなことでも分け合えることができんだろ。」
その言葉を聞いて、私は顔を上げる。
そして、そんな私を見て、「そうだろ?ナマエ。」と言われる。
それを聞いて、少し罪悪感を感じながら。
「・・・うん、そうかもね。」
そう呟いて、彼の肩に頭を置き直した。
もう少し、人に甘えてみようなか、と思いながら。


その林檎は、甘かったに違いない

                
【久しぶりにナマエが俺ん家に遊びに来た! もう少しあいつも休み取ればいいのにな。顔が疲れてたぜー!!
でも、俺様を見たら疲れも吹き飛ぶってもんだ!! 俺様格好いいからな!
ナマエなら、忙しくても歓迎するのによ。・・・あー!次の休みが待ち遠しすぎるぜ!!!】
彼のブログを見て、笑ってしまう。全くギルは素直じゃない。
【休みじゃなくても、遊びに行っても良いかい?】
そして、そうコメントを返す私も素直じゃないのかもしれない。

アダムとイヴの様に素直にはなれないかもしれないけど、一緒にいたいと思う気持ちは同じなのかな。

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