眠り姫におやすみを 何も知らないナマエは、いつものようにこっちへ接近してきている。 そして、足音がドアの近くで大きく聞こえるようになったら、俺様の作戦が決行される。 ドアが大きく開いた音がした瞬間、俺様はぎゅっと目を瞑った。 「あれ、ギル。・・・・・・寝てる?」 「めっずらしいなぁ・・・ギルが座って寝ているなんて。まぁ、良いけど。」 隣、邪魔するよ。と言って、俺様を気遣ってなのか静かに隣に座ってきた。 そしてじーっと俺様を見つめている気がした。(本当は此処で驚かせても良いんだろうが、作戦のためだ、我慢我慢。) 「寝てれば、格好いいんだろうなぁ。・・・多分?」 おいナマエ、だろうなぁって何だよ。しかも、お前多分って言っただろ!? そう叫ぶのも堪えて寝たふりをしていると、ナマエのしている手袋が外されていく音がした。 パサリ と落ちる音もいつもより大きく感じられて、何となくだが、気恥ずかしく感じられる。 「肌、白いなぁ・・・。女の子みたいに綺麗だし。睫毛、あ、銀色なんだ・・・。」 「・・・、・・・。」 「!!やば、起きたかな・・・。」 ナマエの手が俺の顔を触るから、こそばゆくて身じろぎをすると、手が俺の顔から引いていく。 「・・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・・・お、おきない。・・・じゃぁ、いいかな。」 お!? 「起きないギルが悪いんだ。・・・私は悪くない。」 おおお!? ナマエの顔が近づくのが感じられて、俺はゆっくりと自分の口を突き出してみる。 やっぱり俺様の作戦は大成功だぜ!とか思いながら、心の中でによによしていた。 そうして待った居ると、一回俺様の肩に何かが乗った後、ナマエが小声で「おやすみなさーい。」と嬉しそうに呟いた。 ・・・は? しばらくその状態で待っていても、一向にキスの気配はない。(菊が王道だから、大丈夫とか言ってたのによ!?) 不思議に思って横を見ようすると、何かに当たる・・・頭だろうか。 「・・・ナマエ?・・・あー・・・寝ちまってる。」 見ると、俺様の肩に頭を置いて、静かに寝息を立てているナマエが居た。よく見ると、最近あまり寝ていないのか、目のしたにはうっすら隈が出来ている。 「・・・仕方ねーから膝枕してやるよ。」 そう言って、起こさないように頭を俺様の足に置くと、その顔に毛布が被さった。 「!!・・・良かった、おきてねぇ・・・と言うか、俺は毛布なんて持ってきてなかったよな?」 記憶を辿るも、そんなモノは準備していない。キスしたらそこで起きる予定だったから、それは要らない。 と言うことは、俺様の膝の上で寝ている奴が俺に掛けたとしか思えない。そして、毛布は一枚だ。 「ったく、自分のことも少しは大切にしろっつーの。あーあ、ホントに俺様優しすぎるぜー。」 口元がにやけるのを感じながら、毛布をナマエに掛けてやる。 「・・・・・・・・起きたら構ってやるから、今はゆっくり寝るんだな。」 さっきお前が俺様にやったように撫でた後、デコと口にゆっくりと口づける。 俺は目が覚めちまっているから、ちょっと退屈だと思う反面。 こんな昼の過ごし方でも、たまには悪くないかも知れないと、そう思っている俺もいる。 馬鹿みたいに寝ているナマエを笑いながら、もう一度口にキスを落とす。 邪魔しなきゃ、別に俺様が何したってかまわねぇよなぁ? 君が寝てたら、俺は暇なんですが。 「あー・・・何やってるんだ兄さん。」 もうすぐ夕食の時間なので、リビングに入ってみると、ナマエに膝枕をしている兄の姿があった。 兄さんは俺を確認した瞬間、小さな声でこう呟いた。 「いやな、俺様が直々に膝枕してやってたんだがな・・・足が、痺れてきた。ヴェスト、助けろ。」 「・・・ナマエを起こせばいいじゃないか。」 「いや、それは駄目だ。起こすなら、ヴェストがやれよ。」 そう言う兄に、何を言っても聞かないことを知っていたので、俺は早速キッチンへと向かった。 「ちょっ、ヴェスト!?」 「晩飯まで我慢していてくれ。・・・多分そのころにはナマエも起きるだろう。」 結局の所、俺も兄さんもナマエに甘かった。 back |