ショート | ナノ
お前に出逢えて良かった


「座ると死ぬぜーバズビーズチェアー♪」
「・・・なぁ。」
そう言って、俺は声の主の方を見る。
「何でその曲なんだ?」
そう。ずーっと流れているらしいのだ、彼女の耳に。
「えー・・・き、聞きたい台詞があるから。」
少し顔を赤くしてそう呟いた彼女を、可愛いな・・・とか思って無いんだからな、馬鹿!
「そんなに聞きたいなら、ほら、今ここで言ってやろうか?・・・べ、別に暇だから付き合ってやるだけだからな!気になってなんか無いんだからな!」
「うん。なら・・・・・・んー、いいや。絶対言ってくれなさそうだし。あ、夕飯の準備してくるよ。」
のんびりそう言って、立ち上がって行ってしまった。
「ったく、俺と違ってあいつ素直じゃねぇよな。・・・ん?」
ふと見ると、座っていた所にさっきまで耳に付けていたと思われる音楽機器を見つけた。
「・・・・・・ちょっと聞いてみるか。」
そう言って、自分の歌った曲を聴いてみる。(何か自分の声聞くって、変な感じだな・・・。)
正式名称を言ってくれ、とかじゃねぇだろうしな・・・。そう思いながら聴いていくと、ある台詞が引っかかった。
「・・・これ、か?」
・・・・確かに、これは言う方としても恥ずかしいな。
まぁ、あいつが我が儘言うなんて無いからな。これぐらい聞いてやらないと・・・。
キッチンへ足を運ぶと、「ん、アーサー・・・どうかした?」
そう聞かれたのを無視して、俺は抱きしめながらこう言った。


「・・・お前に出会えてよかった。」


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