ショート | ナノ
誘うにも一苦労


「お、おい。ナマエ・・・・・・ってナマエ!?大丈夫か?」
「・・・・・・なんだ、アーサーか・・・。」
クリスマスイブ、色んな関係で会合があった。それで、俺はそのついでにナマエに明日・・・その、誘いに来たはずなんだが。
「・・・なぁナマエ。何でお前、そんな机に突っ伏してるんだ?」
クリスマスに予定が入っていないから、と言う理由では無いのは確かだ。
なぜなら、ナマエの机の上に真っ白の紙とペンが転がっているからだ。・・・嫌な予感しかしない。

「『クリスマス物で甘いのが見たいですね。』って私に苦しめとしか・・・。」
クリスマスネタとかのイベント物はネタが固定されてくるんだし・・・止めて欲しいとか。
これが本当のメリークルシミマスじゃないですか・・・。とかブツブツ呟いているそいつに、俺は小さく溜息を吐いた。
なんだか、デジャヴだ。
「・・・なぁ、ナマエ。」
「何ですか。」
「その、だな。」
「はい。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「・・・・・あー!!だから!」
もうヤケだ。きょとんとした顔をしているナマエに何も考えずぽんぽん言葉を出していく。

「明日、俺ん家に来い!」
「え、何でですか。」
「クリスマスってそういうモンだろ。一応、俺達だって・・・その、あれだしな!!」
「・・・・・・・。」
「明日の予定知らねぇけど、仕方がないから俺の部屋ぐらいなら貸し切ってやる。」
「・・・。」
「別に外行きたいって言うなら、俺の車でも何でも使っていけばいいだろ!・・・だから、だなぁ。」
その、何とか言えよ。と口ごもりながら正面をちらりと見てみると、顔を赤くしたナマエが口を小さく開き始めた。

「・・・あの、さ。アーサー。」
「何だよ。」
「予定はないです。」
「・・・ああ。」
「家の中で過ごしたいけど、外のイルミネーションが見に行きたいです。」
「行けばいいだろ。」
「小説の締め切りは今度の会合まで、らしいから・・・。」
「締め切り結構あるじゃねぇか。」
そんな俺のツッコミをスルーして、ナマエは今よりも更に声を小さくして呟いた。
「だから料理を持って行くので、迎えに来て欲しい・・・です。」
そういったナマエに、俺はそれよりも小さい声で「おう。」と答えるしか出来なかった。


誘うのにも一苦労


(・・・そういえばナマエ。さっき、何で赤くなってたんだ。)
(え、さっき言ったことを頭の中で復唱してみたらどうですか。)
(・・・・・・は?)
(けっこう恥ずかしいこと言ってたよ・・・。)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。)



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