この関係が変わっても 「はじめまして、ナマエちゃん、俺はフランシス、今日から君の家族になる。」 男の、笑顔はそれは朗らかだったが、あの時自分の心は泣いていた。 今までの家族から引き離され、挙げ句。 まだ元の家族の家と戦争をしている国に住むなんて。 「今日から、宜しくね?」 男の差し出した手を振り払うほど強くない自分が恨めしかった。 「・・・宜しくお願いします、フランシスさん。」 「何、泣いてるの?そんなに怖がらなくても。お兄さんは身内は大切にするから大丈夫。」 ふわりと舞う長い金色の髪の色は、鮮やかな金色ではなく、優しいハニーブロンド。 信用できるかと言われれば答えはNOだが、どこか頼りになりそうな感じがした。 彼が強いことは知っている、だから。いずれ元の家族の元に返れることになるまで。 彼と私とは家を同じくする家族なのだと。 「まぁ、あの時はそんな事もあったよね。」 太陽が昇った昼下がり。小麦の収穫の休憩の合間の小話。 「それで、まだ、ルートの所に戻りたいの?」 「戻りたくない、って言ったら嘘になりますけど。」 平和になった今でも、やはり家族には会いたい。 「少し、なら。いいよ。お兄さんが本気で浮気しないうちに帰ってきてくれれば。」 「今更、帰れませんよ。逆にあの時に貴方側についたときから、解ってましたし。」 結局、彼の思惑通りなのだ。 ヨーロッパの中でも長いこと生きているだけはあって、無駄に悪知恵が働くらしい。 「それに、貴方。私が視界から消えたらすぐ、浮気するじゃないですか。」 家には帰りたい。 でも、狡く優しい恋人を置いて帰れるほど、私は器用ではないのです。 この関係が変わっても 彼のそれが家族愛の延長なのか、それは置いておいて back |