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燃えさかる恋の対処法


仲の良い桜。
普段から自己主張の無い兄に似ている、生粋の大和撫子。
自分から意見することもない、綺麗なだけの日本人形。
何故、彼女ばかり、見てるの?

「桜は、物覚えが早いなー!!流石、菊の妹なだけあるね!!」
「お褒めのお言葉、ありがとうございます。」
「桜の起源はあたしなんだから、桜が凄くて当然でしょ??」
その言葉に、桜はいつも通り、頷く。
「そうですね。」
何の意味もない、賛同の言葉を述べながら笑う彼女に苦笑する彼。
「まぁ、名前も頑張ってると思うぞ!!」
その言葉に少し照れながらも、何か桜のついでの様な気がしてしまう。
素直な彼が、そこまで考えられるなんて事はないのだと知っているのに。
「・・・ありがと。」
「どうしたんだい?体調でも悪いのかい?」
「・・・気がつかなくてすみません、今から布団を敷きますね。」
バタバタと布団を取りに去る桜の後ろ姿を少し苛つきながら見ている自分。
何故だろう、こんな考え方しか出来ないなんて。

「桜一人じゃ、布団は重いだろ。よっし、ヒーローの俺が・・・」
「嫌だ!!」
その場から桜を追いかけようと立ち上がるアルフレッドの上着を掴んだ。
何も考えられなかった。
ただ、衝動的に、何かが、溢れていた。
「桜がそんなに、好き?」
「何言ってるんだい?確かに好きだけど。」
「あたしより?」
「あっはっは、何のジョークだい?」
アルフレッドが少し、呆れた様な顔をしながら聞いてくる。
「だって、いつも、いつも、桜ばっかり・・・!!!」
「あのね、桜と名前は違うだろ?」
「そうだけど・・・っ、桜より私をみなさいよっ!!」
「・・・名前、」
彼の上着を掴んでいる手が震える。
もうすでに自分が何を言っているかなんて解らなかった。
「何よ、どうせ、桜のほうが可愛いとか言うんでしょ?!」
「いや、話を聞いてくれよ。」
「嫌だ、だって、きっと耳に優しくない!!」
「あのね、確かに桜は可愛いよ?でも、俺は桜を妹としてしかみてないし、」
「何言ってるの?あたしは解ってるの!!」
「解ってるって、何が? 名前は俺の事、何も解ってないよ。」

その一瞬の彼の表情に凍り付いた。
それは昔、ずっと昔に一度だけ見たことのある彼の表情。
桜の兄、菊が彼に一度だけ反抗した、あの時。
全てにおいて、相手の意見を寄せ付けない、表情。
「・・・ごめん、なさい・・・」
彼は私の手を上着から解き、握りしめる。
「本当に、解ってないの?」
「・・・・・・?」
「解ってなさそうだね、本当に名前は、物覚えが悪いんだぞ!!」
“桜より”
彼は少し口の中で小さく呟いた。

「あのね、俺はね、ずっと昔から言ってたよね?」
「・・・・・・?」
「だから、それでも気づかない君が悪い。」
アルフレッドの口調がいつもの横暴な口調に戻っていることに安堵した。
だけど、それと同時に、彼に言われた「桜」のワードが痛い。
「何に、気づいてないって言うのよ・・・・!!」
「俺は、名前が好きなんだぞ!!」
まぁ桜と仲良いのは、菊絡みだから仕方ないだろう?と彼は笑う。
「昔から、ずっと、俺は名前しか見てないよ。それでも、もっとって言うの?」


LooK at me !!


「おい、いい加減出てきたらどうだい、桜?」
「あら、アルフレッドさん、気づいてました?」

「これだから本田兄妹は・・・頼むから新刊のネタにはしないでくれよ」


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