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甘い悪戯


洗濯物を干していると、近所の子供たちが仮装をしているのが見えた。
 「・・・今日って、もしかしてあの日なのかなぁ?」
 子供たちを見ながら私はそう呟く。
 ・・・お菓子を買わなくてはいけない。と、悟った私はお菓子屋さんへと走った。 
 果たして、お菓子はまだ売っているのかは知らないけれど。

 あれから、太陽が真上に昇ってきた。
 「それぐらい時間が経っても・・・・。」
 お菓子屋さんにお菓子がないなんて・・・ありえないと思うんですよ!! 
 流石・・・玄関とかにカボチャを飾って、仮装でお菓子を取っていく恐ろしい(?)行事だ。
 お菓子屋さんの陰謀か、カボチャ会社の陰謀としかいえないよ・・・。(でも、違うんだよなぁ・・・・。) 
 「ん、まてよ。・・・居留守を決め込めばいいんじゃない?」
  そうだ。その手を使えば、お菓子を買い込む必要が無い!!
 とか思っていたら、ふと、あることを思い出した。

 『おい、ナマエ。』
 『どうしたーアーサー。』
 『31日、ナマエの家開いていないか?』
 『今月のー?うん空いてるよ。と言うか何で?』
 『ん?・・・あぁ。全員(各国?)集めれるだけでパーティをしようと思ってな。』
 『!!・・・いいよ!私の家広いし、大丈夫さ!!』 
 
 「・・・・・そうだった。アーサーに暇って言ったわ自分。」
 しかも、あいつのことだから・・・本当に全員(各国)に出してるよ。招待状を。
 「すっかり忘れてた。ナマエさんたら、うっかりうっかり。」
 やばいやばい。内心すごくあせっているよ自分。(外見もすごくあせっているだろうよ!!)
 「くそう・・・。お菓子がなかったらどうするんだ、マリーさん(アントワネット)!!」
 あぁ。家にあるのは、野菜とか小麦粉とか・・・・。
 小麦粉?・・・そうだ、マリーさん!!
 「お菓子が無ければ・・・。」
 作ればいいんだよ!ナイスだナマエ!
 そうとなったら、即実行だ。私は家へと足を速めた。

 帰ってすぐ作り始めたら、何とかお菓子を用意する事に成功。
 何カ国(何人?)来るのか知らないからなぁ・・・。 
 「ナマエさん、クッキーにしたけど・・・。良かったかな?」
 私は出来上がったクッキーを不安そうに見つめる。(はっきり言うと簡単だし、数あるし・・・。)
 「ま・・・まぁ時間が余った分、他の料理に取り掛かれたから・・・良いよ・・・ね?」 
 その後、待っていたかのように家のチャイムが鳴った。

 「ナマエ。約束どおり来たぞ!!」
 「うん、ホント約束どうりだよ。しかし・・・結構いるなぁ。いち・・・にー・・・って9人しか居ないじゃん。」
 「・・・まてナマエ。」
 青ざめた表情で、アーサーが聞いた。
 「俺と、アルフレッド。ヴァルガス兄弟、ルートヴィヒ、ローデリヒ、イヴァンと菊。」
 指を指しながら、(本当はいけないんだよ?)一人ずつ名前を言っていく。(それに比例して、顔もどんどん青ざめてる・・・。) 
 「もう一人、誰が居ないんだ・・・?」
  「ぎゃぁぁぁぁぁ!!イヴァン、冬将軍をつれてこないでよ!!ハロウィンだからって!!!」
 そう言って、パニックに陥るアーサーとアルフレッド。(イヴァン以外の方々も、顔が青ざめている・・・?)
 それを聞いていて、不思議に思った私は言った。
 「マシュー。・・・包帯男のマシューが居るよ。ほら、アルフレッドの隣に。」
 「マっ・・・・・マシューだ、本当にマシューだ!!!しかも俺の隣かよ!!」
 「うん、すごく可哀想だから。ほら、凹んじゃっているから。」
 気づいてもらえなかったのが、すごくショックだったらしい。
  マシューは熊と一緒に凹んでしまった。
  「ま・・・まぁ。今日はハロウィンだからな。楽しまないと損だぞ、マシュー。」
 そう言って、何とかしようとするアーサー。(偉いなぁ。)
 彼の言うことは正しいからな・・・。そう思い、私はマシューに話しかけた。
 「うん、アーサーの言うとおりだよ。今日は楽しまなくちゃ。」
 「・・・そうだね。」
 そういって、何とか納得してくれたマシューは。
「ナマエ、トリック・オア・トリート!!」 
 と、あまりにも早い立ち直りを私に見せてくれた。

 月がパーティを始めたときよりも、上へと昇ったころ。
 「うえぇぇぇぇえぇえぇえ・・・・・。」
 私はと言うと。皆が盛り上がっている隣で、グダーっとしていた。 
 (午前中から、頑張ったからさ。本当に疲れたんだよ・・・。)
 そうして椅子にもたれ掛かっていると、後ろから肩をたたかれた。
 「ナマエ、ナマエ。」
 とたたかれた後、呼ばれたので振り向いてみると、にこやかな顔をしたイヴァンが。
 「ナマエ。トリック・オア・トリート。」 
 そう言われたので、私は待ってましたといわんばかりに、ポトン。とイヴァンの手の中に今日作ったクッキーを落とした。
 そしてクッキーを美味しそうに食べると、イヴァンはこう言った。(しかし、すぐに食べるとは思わなかった。)
 「うん、ありがとう。お礼に・・・悪戯してあげるよ。」
 そういい終わるのが早かったのかは解らない。ただひとつだけ、私の目の前を風のように通り過ぎたそれは。


甘い甘い悪戯を


その悪戯を、いつの間にか終わらせていたイヴァンに、私は呟いた。
 「ねぇ、イヴァン。」
 「ん、なんだいナマエ?」
 「私は、イヴァンにお菓子をあげたよね?悪戯することは無いんじゃない?」
 「・・・・・・ナマエにしたかったんだよ。悪戯。」
 別にしなくて良かったんですけどね・・・。とか思ったり。


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