運命だと誰かが言った 昨日の夜くしゃみが出たので、久しぶりに、そしてこんな時に風邪を引いたとか、タイミング悪いな。と思っていたのだけれど。 どうやらそれは間違いだったことに、今更になって気が付いた。 「こんにちは、レオ、君?」 「あ、ははははは・・・ナマエさん、コンニチハ。」 ホテルの朝ご飯を食べて、広場でレオ君に会って、この街を散策する。そこまでは私も知っている。 ただその予定の中に、他の人たちがついてくるだなんて話しは全く知らなかったのだけれど。 そう思いながらレオ君を見ると、無理やりに笑顔を作っているのが見えて。あぁ、何かあったんだなと予測をしてしまう。 面倒事は苦手だけれど、まずは話を聞いてみないとな。そう思って、読んでいた本を閉じ、ベンチから立ち上がった。 「すいませんっ!!ほんっとーにすみませんでした!!」 「いや、分かった。分かったから、レオ君。まず先に今のこの状況を教えてほしいのです。」 レオ君たちの近くに行った瞬間に急に謝られて、今の会話に戻るのだけれど。 まず、この謝っている彼をどうこうしないと、全く何も先へ進まない。 でもだからと言って。 そう内心で呟きながら、ちらりと後ろの方を見てみれば、いかつい顔の人と、何かを探るような目をしてこちらを見ている人が見えて。 ・・・正直、後ろの彼らに私から話しかける勇気はない。ということになると、やはりレオ君には早々に謝りループから抜け出してもらわないと。 そう思って彼の背中をさすりながら、この状況を説明してもらう事にした。 「申し遅れました。クラウス・V・ラインヘルツと申します。」 「スティーブン・A・スターフェイズです。はじめまして。」 「えっと、ナマエと言います。は、はじめまして・・・!!」 その後、目立つからと移動されたカフェにて、混乱する頭を必死に整理しながら、挨拶をする。 広場で聞いたさっきの話が本当ならば、目の前のこの人たちはレオ君の上司で。 ・・・何で挨拶に来るのかはおいといて、まぁそこまでは百歩譲っても良しとしよう。 なのだけれど。 「誠に唐突なお願いだとは重々承知しておりますが・・・どうか、どうか宜しくお願い致したく!!」 どうやら私に白羽の矢が立てられて、何かを復元するお願いにこの人たちが来ているらしい。内容はざっくりそんな感じだった。 とりあえずそれよりも、青い顔をしてこちらをチラチラとみてくるレオ君と・・・。 この人、ラインヘルツさんにこんな顔をさせて、こんなことを言わせている事にも、心が痛んでくるし。 これはうんと言わざるを得ないじゃないか、だなんて思ってしまう。(もともと、彼らにとっていい返事を出そうと思ってはいたけれど。) そう思ってしまう私はきっと、交渉事には向いてないんだろうな。と思いながら、けれど最後の確認として、私は口を開いた。 「私のこと、レオ君から聞いてますよね。」 「ええ、聞きました。貴女が考古学者だということは。」 そう言うのはスターフェイズさん。・・・それが分かっているのならば、なんでラインヘルツさんを止めないんだろう。なんて思いながら、また口を開く。 「なら分かるんじゃないんですか。・・・私がかなり怪しい人間だってこと。」 私だったら、の話ですけど。そこまでお願いしてくるような案件を、知らない人に預けることは、しません。 と言ってやれば、驚いた顔をするスターフェイズさんと、さらに慌てた顔になるラインヘルツさん。 「っ、し、しかし・・・急を要するのです!」 うん、分かってるよ。ラインヘルツさん。そしてうんと言いたいのも山々なのだけれど、これ事だけはどうしても確認しておかないといけない。 「もし私が協力するとしたら、そちらに対して何かお聞きすると思います。・・・しかし大事な案件ならば事情があって、言えない事も多いでしょう。ですから答えたくない質問をされた時は、答えなくて結構です。詮索もしません。」 「・・・。」 「ですが私も私で事情があります。自分のことを多く語れません。別に詮索はしてもらっても構いませんが。」 そう言ってから息を整えるように、一旦呼吸を入れる。 これにNOと答える人がいるのであれば、レオ君とラインヘルツさんには申し訳ないが、こちらもNOと答えるしかない。 「それでもよろしいのであれば、私は喜んでお話をお受けします。」 そう言い切って、私は相手の出方を待つ。・・・だなんてカッコつけてみるけれど、それしか今出来ることがない。 ドキドキしながら、待っていると。 「私は、貴女を信じるレオナルド君を信じています。こちらの急なお願いに応えてくださり、本当にありがとうございます・・・!」 「んー、正直クラウスが良いって言ったら、俺、何も言えないんだよねぇ。・・・この案件、よろしくお願いするよ。」 「ナマエさん、ありがとうございます!!」 という三者三様の返事が返ってきて、とりあえず私は苦笑いで返すしかなかった。 そしてまだ午前中なのに、なんだかすごく疲れた気がする。なんて思いながら、今まで手に付けてなかったココアにやっと手を伸ばすことができた。 「早速で申し訳ないが、すぐに作業に取り掛かって欲しいんだ。」 スターフェイズさんにそう言われ、町の案内なんて無かったことにされ、代わりに建物の一室に案内された。 部屋の中に入ってみると大きな箱が3つおいてあり、中を見てみると、ばらばらになった欠片が置いてあった。 簡単に見た感じだと、素焼きのものと、またそれとは違う素材のものが2、3ある、かな。それを見てから、彼に尋ねてみることにした。 「これ、元の形って分かりますか?」 「すまないが分からない。」 「最近壊れたみたいですけど、発掘した方からお話は聞いてないので?」 「・・・これを発掘してた最中に落盤事故が起こってね。生存者はいないんだ。」 「ああ、その時に壊れたんですか。」 そう言ってもう一度箱を覗き込む。結構バラバラになっているので、酷い落盤事故だったんだろう。 「えーっと、一応拾える分は全部拾ってもらった、ということでよろしいですか。」 「ああ、あらかた拾い集めたと聞いているよ。他に何か聞きたいことは?」 「何処にあったかとか、使われていた用途なんて・・・分かりませんよね?」 そこから何か形状のヒントが出てくるかもしれない。そう思いながら聞いてみれば。 「棺だよ。魔物を封印してたっていう。あった場所は確か、神殿だったと思うが・・・。うろ覚えだから、きちんと確認させようか?」 「・・・いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」 その言葉を聞いて、それ、急ぐ必要あるんですか?と聞きたくなったのをぐっとこらえ(必要だから急いでるんだろうしね、うん。)、私は他に聞くことは無かったか頭をめぐらすことにした。 「・・・じゃあそう言うことで、よろしく頼むよ。また他に何か要りようだったら、追々言ってくれればいいし。」 「あ、ありがとうございます。」 とりあえず一通り説明してもらったし、まずはこれらを掃除することから始めようか。と、用意された道具を手に取り、作業をすることにした。 (言い忘れてたんだが、報酬はどれくらい欲しい?悪いが先払いには出来ないから、成功報酬って形になるけどな。) (え、報酬?もしかして、お金貰えるんですか!?) (そりゃあ、そうだろう。・・・で、幾ら欲しい?君の言い値をまず聞きたい。) (え、あ・・・そ、それは困ります!無理です!お先にどうぞ!) (は?) title by Single Realist back |