異世界と等価交換 とりあえず鎖を全部持っていくほどではないと思ったので、輪っかを3つ分解して金をゲットした私。(ちゃんと向こうはつなげておいた。) 『くれる』といっていたけれど、正直彼らと同じような事をしてしまった気がする。 「あの、僕のとられたお金まで取り戻してもらって・・・ほんと、ありがとうございました。」 「いえ成り行き?みたいなものですし。」 この人を助けたということで、さっきのはプラマイゼロ・・・ということにしておかないと、私の胃に穴が開きそうだし。 我ながらめんどくさい性格だよなぁと思い、内心溜息をついた。 「というか、全然ここのこと、知らないんすね。」 とりあえずさっきの人たちが追ってくるといけないので、私がお昼ごろに来ていた広場まで逃げて。 暫く2人でベンチに座っていると、そんな言葉がぽつりと聞こえてきた。 「あー、はい。そうなんですよ。なんか、その・・・唐突に?」 「わー大変すね。こっちに来たのは、お仕事か何かで?・・・あ!別に言えないならそれで良いんですけど。」 そう言って急にわたわたし始める彼を見ながら、さて、どうしたものかな。と少し考えてしまう。 図書館情報だと、こちらには錬金術が発展してなかったみたいだから、錬金術師ですなんて言えないし。 頭大丈夫かな。と心配されない程度に、喋るくらいが丁度いいんだろうな。と考えて口を開く。 「学者。」 「え、あわ・・・へ?ガクシャ?」 「ええ。私、考古学とかを研究してる者でして。」 「じゃあ、頭いいんですね!」 「うーん、そこまででもないと思いますけど。えっと、それで、考古学関係でこっちに来てしまったんですよ。」 「へー、学者も大変っすね・・・。」 当たり障りのない感じで話をまとめて言えば、そうやって返事を返してくれる彼。 正直に言えないことが少しばかり心苦しいけれど、それは仕方のないことだと、自分に言い聞かせる。 「ここに来たこともいまだに信じたくないんですけど、所持金が無いという事にもちょっとした絶望感を味わいまして。」 「へー、大変ですね・・・って、冗談抜きでお金ないの!?」 「いやぁ・・・持ってるには持ってるんですけど。」 そう言って自分の財布を見せると、彼は不思議そうな顔をして硬貨の一枚をつまんだ。 「えーっと・・・これは?」 「私の国のお金でして。センズっていうんですけど。」 両替できないって言われっちゃって。とギャグっぽく言ってみるも、向こうの人は顔をしかめてこちらを見てくるだけだった。 「・・・いつからこっちに来てるんですか?」 「えっと、お昼ご飯食べる前ですかね。あ!お昼は心優しい方に奢ってもらっちゃいました。」 今度また会えたら、お礼をしたいんですけどね。と話すと、さらにずいっと怖い顔でこっちを見てくる。 「夜は何を食べる予定で?ホテルは!?」 「えっと・・・パンの予定でした。宿は最悪、野宿しようかなとか。」 そう答えれば、目の前の彼は思い切り盛大な溜息をついた。 「あのですね。ここ、ヘルサレムズ・ロットは何があっても可笑しくない所なんですからね!?」 「あ、そうなんですか?」 「いや、『そうなんですか?』じゃなくて、そうなんです!!命がいくつあっても足りないような所なんすよ!?」 野宿なんて絶対だめっすよ!と初対面の人に怒られてしまった私は、とりあえずごめんなさいと謝ることしか出来なかった。 「あーでも、僕、ちょっと今職場にお世話になってるんで、その・・・。」 「え・・・私よりも、あなたの方が大変じゃないですか!ここに住んでいらっしゃるんですよね?」 「ええ、まぁ。でも大丈夫です・・・って、違くて!!お金!どうするんですか!!」 「それは安心してください。質屋に指輪を売ってお金にします。まぁ、質屋がどこにあるのか知らないんですけど。」 「いやそれは僕も一緒になって探してあげますから!・・・でも、良かったです。お金が何とか作れるみたいで。」 そう言って笑った彼を見て、私は先程作った指輪を見せようとポケットを探る。 もう法律がどうとか、今は気にしない。ぎゅっと目を瞑って、向こうの国の偉い人に心で盛大に謝っておきます。ごめんなさい。 「売ろうと思っているのは金の指輪でね。でもまぁ、それだけじゃ売れないだろうからって、小さな宝石をつくっ・・・・・・って、あ。」 「え?どうかしたんですか?」 「・・・ごめん、鉛筆って持ってる?」 「はい?」 触って気が付いたことなのだけれど。 宝石を入れる窪みを作ったはいいが、宝石になる材料を持っていないという事態が発生した。(だからと言って、窪みを埋めるのもめんどくさいし。) 多分ダイヤを作るのが一番手っ取り早いはず。だなんて、杜撰な計画に笑ってしまいそうになりながら、そう訊いてみると。 「えーっと。シャー芯ならあります、けど。それで良いっすか?」 「・・・写真?」 「いえ、シャー芯。」 「えーっと、じゃあそれでお願いします。」 良く分からなかったけれど、実際に貰ったのは折れそうなぐらい細長いやつを2本。 普段これをどうやって使っているのかは知らないけれど、今はこれさえあれば十分だ。 「ありがとう!今度、何かお礼しなきゃですね。」 「いやいや、俺の方がしないといけない位だから!明日お礼に飯奢ります!」 「いや、こちらこそお礼しないとですから。」 「いやいや!」 「いやいやいや。」 ・・・そんなやりとりを数分やった後、これが終わらないやり取りだということに気づき。 とりあえず明日またここに集合して、この街を案内してもらうことで、話は一応まとまった。 何だかこちらがすごい優遇されている気がしてならないのだけれど。 彼こと、レオ君曰く。(名前はさっき教えてもらった。) 「ビギナーには本当、案内ないと辛いんで。ここ。」と言われてしまい、仕方なく了承することになってしまったのだ。 「・・・じゃあ、案内は明日にするとして。今から質屋、探しに行きましょうか。」 「あ、はい!お願いします!!」 そう言ってベンチから立ち、ゆっくりと歩き始めたレオ君をじっと見つめる。 錬成時に発生する光が出ないように気を付けて、こっそりポケットでダイヤを錬成し、それを指輪にくっつけながら。 「・・・でもナマエさん。良かったんですか?あれ売っちゃって。」 そう言われ、先程質屋に売った指輪の事を思い出す。 結構な値段で売れたので、そのことにホクホクしていた私とは正反対に、複雑そうな顔をしてこちらを見るレオ君。 「大丈夫ですよ。あれ、即席なんで。大事な思い出とかは無いです。」 「?・・・なら良いですけど。」 とりあえず暫くの間は、何とかここで生きていくことが出来そうだ。 そう思いながら、キラキラ光りはじめた街を見上げた。 (・・・って、え。レオ君レオ君。アレなんですか?) (あれって?・・・え、ビルに埋め込まれてる大型テレビのこと?) (びる、てれび・・・テレビっていうんですか、あれ。じゃあ、あの赤と黄色と緑のやつは!?えっと、えと、それに・・・!!) (え、ちょっと待った!ナマエさんどこ行くの!ナマエさーん!?) back |