異世界と等価交換 | ナノ


壊れない世界の裂傷


青い空、白い雲、乾いた風。
その心地よさに目を細めながら立ち上がり、空を見上げて。

「あー・・・なんて良い発掘日和なんだろう。」

そう呟きながら、額の汗をぬぐい、また作業を開始した・・・はずなのに。

「ここ、どこ。」

真っ白い光に包まれた後に見たものは、灰色の街と鬱蒼とした空。
おいおいおい、もしかしてあれ、転移装置だったのか?と、今更になって気がついても、後の祭りだった。


今回の発掘調査の目的は、最近新しく見つけた遺跡の調査だった。
もともと他の文献や伝承を見るに、その辺りには吸血鬼が住んでいたという伝説があったので、今回の遺跡はその伝説を裏付ける、世紀の発見になるかもしれない。
そう知り合いの博士が息巻いていたので、私もその手伝いをするべく、アメストリスとシンの国に挟まれた砂漠に来ていた。
・・・正直私を呼んだのは、シンの言葉を話せるからじゃないのかとか邪推したけれど、考古学者としてはこの話に乗らないなんて以ての外だ。と私は思う。
そこで崩れかけた大きな錬成陣らしきものを見つけたから、こつこつと修復していて・・・。

「・・・そうだ。あの時、あの陣が綺麗に修復出来たと思ったら、光が出て・・・。」

ばたんと扉が動く音がして・・・え、もしかして、もしかして本当にどこかに飛ばされた感じか!?
頭を抱えたくなるような非常事態に、軽く現実逃避がしたかったけれど、正直ここで止まってても何も変わらないし。
そう思ってまず自分の周りをぐるりと確認してみると、地面に転がっている見知った大きめの鞄が見えた。

「良かった、とりあえず自分の荷物はこっちにある!!」

遺跡発掘のための道具も自分の鞄の中にいれていたので、貴重品等も一緒に持ってこれたことに安堵する。
何処に飛ばされたかは知らないが、無一文でなければ列車に乗って帰るなり出来る。本当に助かった・・・!!
そう感じながら、今度はもう少し目線を遠くにして周りの状況を確認する。

「えっと、車に人間と・・・キメラ、かな。」

転移した先が路地裏(のような所)だったので、見える範囲は限られてくるけれど、歩いていく人と車とキメラ(?)が見えた。
どうみてもここがアメストリスの主要な土地ではないことは分かっていたけれど。
ただキメラがいるということは、とりあえずここにも錬金術があるみたいだ。
かなり安心した私は大きく息をはき、まずは両替できるところでお金を両替した後、次の行動を考えよう。
そう思って、人ごみの中に足を踏み入れたのだった。



「え、ぜ、ゼーロ?」
「あんたここまでどうやってきたかは知らんが、アメリカ経由で来たんだろう?ドルならゼーロに交換できるんだけどね。」
「どる・・・あめりか?」
「他だったら・・・そうだな円とかユーロとか。そういう有名どころしか、うちでは扱えないよ。」

長い時間をかけて探し出した両替店に入ってみれば、今持っているお金を見たことが無いと言われてしまい、両替はできず。
結局こちらのお金を手に入れることが出来なかった私は、完全に目の前が真っ暗になった。

「お金があるのに一文無しとか・・・!!」

そう嘆いて空を仰ぐけれど、灰色の空しか見えなくて、正直、つい先ほどまで見ていた青い空が恋しくなる。
・・・・・・とりあえず今日のお昼は、草を集めて・・・それを錬金術でパンにするしかないな。
遠い目をしながらそう思った私は、重い足取りで先程通った道にあった広場へと足を進めることにした。(あそこなら草、生えてるだろうし・・・。)

(んーこれだけあれば十分かな。)
(・・・あの、すみません。何してるんですか?)
(えっと・・・今日のごはんの材料を集めてます?)
(!?)

title by Single Realist

  back

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -