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碧色の疑惑


この時代、紙というのも希少なものらしい。特に上等な紙となればかなりの値段がするに違いない。現代の紙を知っている自分からすれば幾分かまだごわついていると見る紙も多分それなりに良い値段がするに違いない。未来の技術って改めてすごい。

「さて、」

東の方、義姫。政宗の母親。記憶だとたしか政宗を殺そうとしたりする。政宗、梵天丸。後の政宗。病気で右目を失い、のちに右目となる腹心をゲットする・・・だったような。現代の戦国時代ブームでひとしきり調べたので間違いないだろう。正直政宗が右目を失うのはかわいそうだと思うけど、下手に自分も罹って死んでは元も子もないし。こちらでは予防接種も受けていないから本当に死んでしまうかもしれないので病気中は避けるしかないだろう。右目のイベントはどうにかお目にかかりたいところである。むしろ片倉さんが側近になるとか政宗本当羨ましい。片倉さん、政宗の右目。美丈夫で政宗の絶対の信頼を置く側近。智将片倉、うん羨ましい。

それはさておいて。この世界の事なのだが、とりあえずどの程度の歴史の流れなのか分からないので、この間お世話になった紺とかに聞きたいのだが、忍である彼らは父親のところに属すため、己からのお願いはあまりきけないものらしい。彼らもお仕事だし、お疲れさまですといったところか。

「むー・・・」

困った。歴史好きとしては色々知りたい事もあるし、回収したいイベントもあるのだが。中途半端な知識のためうっかり変な事を言い兼ねない。むしろ自爆しそうな気がするからうっかりは極力控えたいところだ。紙の前でうんうん唸っても、良い案が浮かばない。なんか良い事あればいいんだけど、きっかけとか。でもきっかけってなんだ。なんとなく右目のイベントが発生するまでに出来るところはどうにかしたい。だって右目イベントになったらきっと跡継問題とかで俺も巻き込まれる恐れがあるし。今はまだ政宗が継承権第一だから安心だが、これが揺らいだら俺もきっと今まで通りにとはいけないはずだ。

「自由になる手足が欲しい。」

俺の代わりに全国を回る足っていうか、裏に手回しできるような能力っていうか。一番良いのは紺に任務ついでになにかお願いできると良いんだけど。無理か。父上に願い出ても良いんだけど、幼児に忍びって・・・どうしたいんだ自分。護衛にとか言うか? 片倉さんが政宗についてからなら、「俺も!」でどうにか補佐つけてもらえそうだけど。それじゃあ遅いんだよなー・・・。いや、困った。ああもう、こういう考えて答えがパッとでないのは嫌いだ。子供になってからかなり気も短くなってる気がする。

ごろんごろんと畳の上で転がっていれば、はたと気づいた事がある。あれ、俺思ったんだけど、伊達に俺の名前ってあったか? 政宗の弟は義姫の生んだ竺丸、小次郎だけだった気がする。それに政宗と自分との歳の差はあまり開いていないし、自分の母親である蜜姫なんて名前は出て来ていただろうか。

「直系じゃないから伝わっていない、とか?」

可能性としてはあり得るが。なんだか胸の内がもやもやとする。俺の知っている歴史とはどこか違うような。ごろんごろん、と繰り返していればうっかり障子に打ち当たる。びり、と足がはみ出た。破れたぞ。

「・・・・・・あー」

紙は稀少である。それを破ったなどとなれば多少怒られても致し方ないだろう。やぶれた所から外を除くと庭が見えた。現実逃避しよう、そうしよう。障子に遠い目をして外に飛び出した。

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