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違和感の正体


目の前にあの後並べられた品々は記憶のどこかで感じていた違和感をそのまま受け入れるには十分だった。最西の長宗我部家に売ったと言われる碇型の武器を見た時点でそれが完全に確信に変わった。あ、これは史実の戦国時代ではないと。

「BASARAだ。」

異能、という言葉で気付くのが遅れたのは否めないが、異能を扱う者を婆娑羅者と言っている時点でお察しである。

「・・・どうかされましたか?」
「いや、またこよう。つぎはきちんとわたしのものをかいにくるつもりだ。」

難しい顔をして己が吐き出した言葉に、店主はひとしきり笑顔を浮かべた。衝撃の脳内展開に、とりあえず店を後にして、茶屋に向かう。落ち着いて考えるのにはきっと糖分がいるだろう。うん、逃げてない。大丈夫。

目についた茶屋の軒先で団子を頼んでみたものの、ぬるい茶を飲んで団子を口に含み、一呼吸置いた。

「これはまずいきがする。」

団子の事ではないのだが、まわりのものはその言葉にぎょっとこちらを見た。それに気付かないままちびりちびりと茶で口を湿らせながら考える。そんなにやり込んだゲームではなかったため記憶が酷く曖昧だったが、ひとつ救いとしては、キャラが濃かったためにそれなりに覚えている事があるという点だろうか。この世界があのゲームと同じような世界であるのならば忍が空を飛んでも不思議ではない。だって婆娑羅だし。問題があるとするならば、誰のストーリーモードで時代が動いているのかによって、展開が変化するという事だろうか。史実の通りに徳川の世界になるのなら伊達は東軍。この地域はある程度の安泰である。が、婆娑羅というのもありどうなるのかはまったく私にはわからない。

「かなりまずいきがする。」

物語として、まだまだ政宗も幼いことだし、本格的な流れに巻き込まれるのは随分と先の事になるだろうが、それまでにどうにか布石は打っておきたい。平穏に生きることを掲げているだけしかなかった曖昧な将来の動きが、今回の件でどうにか頭の中で形になりつつあった。この世界でどう過ごすのか、どの未来を望むのか。何を選び、何を捨てるのか。これは生前にやったゲームのようにリセットもコンティニューもできない。それならば、間違いのないようにしなくてはならない。やりなおしは利かない、これは紛れもない現実なのだから。

歴史を変えてしまうことに葛藤がないわけではない。私一人で簡単に変えられる流れだとも思ってはいないが、あがいてみるしかないだろう。ちいさな蝶の羽ばたきが歴史を変えるように、私がこの世界に生を受けたときに、既に流れは変わっているのだ。ならば、今さらだと開き直って、私は私らしく自由に生きてみようではないか。例え、私の行動がこの世界の流れを壊すものだとしても。私の幸せは私だけのものなのだから。

違和感の正体

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