中編:海賊♂ | ナノ


噛み砕いた砂の味(1)


「オールサンデーからの報告があった、作戦の決行を早める。」

ばさり、机の上に無造作に投げ捨てられた報告書。 紙は机の上に散らばりゆっくり床に落ちていく。

「・・・普通王女が潜入してるなんて思わない、が・・・あり得ないこともないか。」

計画といっても相手が生身の人間であり、現実である限り何が起こるかなど、完璧に分かるはずもないのだから計画に狂いは付き物だが。 

「いくら何でも、杜撰じゃない、サー・・・?」

ぺらりと拾い上げたのは報告書に挟んであった似顔絵。 麦わらのルフィ、ね。東の海の出身の海賊程度、クロコダイルにとっては雑魚には違いないが用心はしておくに限る。

「ナマエ、何を考えてる?」
「いや、いささかMr.3には荷が重いか、と。」

先程、電話口でMr.3コンビを派遣したと聴いていたのだが、実際の実力からしたらMr.3よりもMr.4の方が実践向きではないのか。そう訴えてみれば、クロコダイルは吐き出した白い煙をくゆらせて笑う。

「あいつの執念を俺は評価している、その辺は問題ないだろう。
 それに、Mr.5達も合流する予定だと先程報告が入った。」

mr.5なぁ・・・、麦わらのルフィに海賊狩りのゾロ。

「・・・俺も、行ったほうが良いか?」
「あ?」

寸分の計画も崩れるのは1つの見逃しやミスによる事が多い。確実でない不確かなものならば、それはなるべく確実に潰して置くに限るのではないか。とりあえず提案しておけば、クロコダイルは面白いとばかりに笑い出す。

「ナマエが出るまでもねぇだろ。」

お前にはこちらでやって貰いたいことも有るんだ、 そう笑って返されてしまえば納得してしまう。なんとかならなかったときは、俺が港まで出向いて潰せば良いだけの話だ。

「Yes、サー。」

オールサンデーがレインディナーズ、つまりこちらに到着したとの報告が、カジノの警備からはいってきたのを合図に椅子からクロコダイルが立ち上がり、 笑いながら部屋から出ていく。

「ナマエ、向こうからの電話報告は滞り無く頼むぞ。」
「了解。計画の調整もしておくから安心してくれ。」
「・・・期待している、」

Mr3がこちらを出て、島への到達の報告があったのが1時間前。そろそろ向こうへ近況連絡を促した方が良いかもしれない。今回、それが成功したかどうかで作戦の練り直しをしなくては。

「・・・面倒な事になってなきゃいいが。」

がちゃり、と電伝虫を手に取りダイヤルを回す。 

『・・・こちらクソレストラン、ご予約で?』
「・・・何をふざけている?Mr3。 報告はマメにしろとMr0から言われなかったか。」
『・・・どちらさんで?』

そうか、そういえば俺の存在はオールサンデーぐらいしか知らなかったか。俺は人とか嫌いだしな。 うん、必要以上に人に接触したいと思わないし。俺のコードネームはなんだったっけか・・・。

『・・・どうした?』
「俺はMr.infinity。Mr0のコンビだ。」

インフィニティ、なんて呼びにくければジョーカーでも構わない。そう告げれば「そうか、」なんて軽く返される。クロコダイルから聞いていた情報よりMr.3という人間は軽そうな奴だと言うことが判明した。まぁ、報告さえしっかりしてくれればMr.3がどういう人間だろうかなんてどうでも良い。

「島への到着報告から暫く経つ。 近況報告を聞こうじゃないか。」

そういえば電話口の向こうの声が止まる。俺に不信感を抱いてるのかもしれない。俺の存在は知らなかっただろうから。

「おい、Mr.3。俺は質問してるんだ。 王女ビビと麦わらの一味は殲滅出来たのか?」
『ああ、任務は完了しましたよ。秘密を知った野郎は全部消し去りました。』
「そうか・・・。今アンラッキーズがそちらへそっちへ向かっている。」
『アンラッキーズ?』
「永久指針を持たせてある。その足でアラバスタまで向かってくれ。」

詳細はいつものスパイダーズカフェにて聞いてくれ。そういって電話を切ろうとしたとたん、電話の向こうから大きな音。

「何事だ?」
『いや、奴が生きてたみたいだ・・・想像以上に生命力の強い野郎で・・・』
「先程の報告では全て消し去ったと言っていたように聞こえたが?」
『あー・・・だが、もう全て息の根は止めた。OK?』
「了解した。それでは電話報告はこれっきりだ。幸運を、Mr.3」

がちゃり、と電話を切ってから一息。あの様子だと報告もあてにしない方が良いのかもしれない。人は嘘を吐くと息がぶれる。きちんとした報告が出来ないようないい加減な奴により、これ以上計画が崩れるのは困る。あてに出来ない報告結果に、今後の計画をどうしたものかと頭を抱える。

「ああ、アンラッキーズにも電話すればいいのか。」

取りだした電伝虫でアンラッキーズに掛けてみたものの、そちらはコール音すら聞こえない。壊れてしまっているのだろうか、だとしたら面倒な事に巻き込まれているかもしれない。

「面倒な事になってしまってるんだろうなぁ・・・」

紙面の上で何度も計画をイメージしてみたが、如何せん邪魔が入られると、どのタイミングでも最悪の結果にしかならない。最低限、麦わらは海賊だから放って置いても、王女だけは殺して置かねばなるまい。

「俺が出るか・・・」

王女を殺し損ねた時の可能性を考えて、奴らがこの王国に到達する前に作戦を済ませてしまったほうが良さそうだ。扉を開けて走れば、少し先の部屋で声がした。クロコダイルの声を間違えはしない。そのまま部屋の扉をノックせずに開き、用件から述べる。

「Mr.0、問題発生だ。 作戦を早めてくれ、」
「どういうことだ・・・、説明しろナマエ。」

ざっと説明してやれば、只でさえ皺の多い眉間に増える溝。

「ナマエはまだ動くな、 Mr.3のところへはMr.2を行かせる。」
「Mr.2は作戦に不可欠だろうが。」
「・・・お前が居なきゃ、俺が困る。」
「・・・っ、了解だ。 Mr.2が戻り次第さっさと作戦を進めてくれ。嫌な予感がする。」


噛み砕いた砂の味


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