企画 | ナノ

どちらも俺にとってはあなた


がちゃり、と全員でぶちこまれた折の中。
なぜ俺まで巻き添えになったのかとしばし考えてから、まぁスモーカーさんと一緒ならそれでもいいかと色々なんだか納得した。納得はしたのだが、少々納得のいかないことのほうもありすぎる。優雅に今朝のハンバーガーの残りを口に含み咀嚼する見知った顔が、敵として織の外に座っているのだ。

「・・・ヴェルゴ。」

ぐっと隣に座るスモーカーが唇を悔しそうに噛み締めた。厳密にはたしぎの体であるからたしぎが、と言った方が正しいのだろうがいかんせんまだ慣れない状況下では整理がしにくくて仕方がない。

「おい!外にいるのはお前の部下だぞ!!」

呑気に外の様子をモニター越しに眺めるヴェルゴ元基地長にスモーカーはいくらも大声を叩いたが、当のヴェルゴはまったく気にも留めていない様子で生返事を返した。そんなことはどうでもいいのだ、と言いたげなヴェルゴにスモーカーさんの眉間にしわが増えるのを見た。

「・・・それにしても豪華な顔ぶれだな。なかなかいい気分だ。」

嘲笑しながら檻の中を、珍しい動物を眺めるかのように立ち上がったヴェルゴに横にいた女が耳障りに囀った。海軍である俺たちが俺たちの内部の失態に頭を痛める横で、冷静に七武海のローが説明をするたびに俺も噛み締める奥歯の力を強めた。しばらく煩い葛藤と騒音に苛まれていれば、がたりと施設の扉が開き、機械によって俺達の入っていた檻が毒ガスの蔓延しているように見えた外に向けて動き出す。

「・・・スモーカーさん。」

声をあげれみればスモーカーはどこか達観しきった顔で、そういうこともある、だなんて諦めきったような顔で笑った。檻が最終的に動きを止めたあたりには足元あたりに部下たちが一斉に固まっており、これは完全にみんなお陀仏だなぁと諦めに似た溜息を吐いた。

「・・・なに辛気臭い溜息なんかついてんだ。」

馬鹿野郎、と肩にもたれかかってくるのは紛れもないたしぎちゃんだから普段だからどうともいうことは無いのだが、これが中身がスモーカーさんだというだけで破壊力は相当である。よくよく今の状況を考えてみれば、命がかかったこんな状況でなければとても美味しいシチュエ―ションなのである。命がかかってなければ。

「・・・あの、スモーカーさん。前しめよ?」

たしぎちゃんの胸にはあまり興味はないのですが、それがスモーカーだと考えてみればみるほどこんな状況なのに関わらず無節操に湧き上がる恋心に苦笑しながらスモーカーの前の服を閉じる。ボタンをひとつひとつとかっていけば途端に恥じらうように染まる赤い頬。

「・・・シオン、時と場所を考えろ。」
「俺はむしろたしぎちゃんの名誉と俺の理性を守ってるだけだよ。」
「・・・・・・。」

二人だけの空間、とまではいけないのが檻の中というものだ。こんな狭い空間には邪魔者が多すぎていけない。とりあえず目の前で愉快そうに笑うトラファルガー・ローを筆頭に碌な奴らがいない。

「・・・で、お前はどっちに惚れてるんだ?」

その女かスモーカーのほうかどっちだ、なんて下種な勘繰りを入れてくる七武海はこんな状況だというのに余裕の笑みである。これだから海賊は・・・と口を開いたところでいつもより低い位置からの柔らかい口付け。スモーカーらしい普段のように荒々しい口付けだが、いかんせん今回はたしぎの体を介しているせいかいつもよりずいぶんといろんな意味で柔らかくて落ち着かない。そんな俺や慌てるたしぎを気にすることなく少ししてから唇を離したスモーカーは鼻でローを笑いながら言い放つ。

「・・・俺が、シオンに惚れてるんだ。」
「へぇ・・・」

酷く面白そうに笑うローと対照的に、その体の持ち主であるたしぎは酷く顔を赤くした様子で手で顔を覆っていた。その様子が見たことのないスモーカーさんの一面のようでどちらに向けても優柔不断な態度しか取れない俺は、ただ心臓の鼓動を速めた。



どちらも俺にとってはあなた


  *   *   *   *

イリエ様
「部下♂×スモーカー@PH原作沿いでローorルフィ絡みでワンシーン」

ルフィとローがいるシーンを選んだはずなのに船長が空気ですみません・・・!!
後ろでひたすら多分麦藁勢がひやかしと生暖かい目線を贈ってくれているはずです。
入れ替わりネタがとても好きなので色々多分予想と違った出来になってしまっているかも
しれません。その際は誠に申し訳ございません。それでも色々詰め込むことができたので自分的にはなかなか楽しく書くことが出来ました。リクエストありがとうございます、また機会があった際にはよろしくお願いします。

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