そうしたら幸せだろうね 「サカズキ、それには俺は賛同できないよ。」 紡いだ言葉は思っていた以上に冷たい響きをしていたらしくサカズキの顔がぴしりと固まったが、どんな提示をされようが俺はその首を縦に振ることなど出来なかった。 「なんでじゃ、」 「だって、つまり俺に元帥の話蹴れってコトでしょ。」 「・・・お前に勤まるとは思わん」 「そりゃ、やれと言われば頑張るけど?」 「逆になんでそんな元帥にこだわる。ボルサリーノなんかは面倒だと蹴りよったが。」 「俺だって蹴りたいよ。でもそうしたらサカズキが元帥でしょ。」 にこり、と笑ってサカズキに言い切れば、ようやく俺がただ元帥に就任したいわけではないのが解ったらしい。サカズキは切れてしまうのではないくらい唇を噛み締めた。 「つまり、わしに、就任させたくない・・・と?」 「そうなるね。」 例えそれで海軍が割れてしまっても、俺達の仲が崩れてしまっても仕方ない。センゴクさんの期待には応えないといけないし、俺は青雉として物語をクザンの代わりに進めて行かねばなるまい。 「言っとる意味が、わかっちょるんか?」 「解ってるよ。つまり、このお話は破談ってコトだろ。」 「わしと、争うことになるぞ。」 「そりゃあ、悲しいなァ・・・でも俺は引けないんだ、サカズキ。」 例え負けることが解っていても、俺は俺が背負うものを捨てて、サカズキに応えてやれる人間じゃない。 「わしに勝てるとおもっちょるんか。」 「いや、引いてくれないかなァとは思ってる。能力的な相性も悪いし。」 無駄な戦いはしたくはない。だから一応話し合いには応じてみた。結局無駄だったのだけれど。 「わしは・・・シオンと戦いとぅはない。」 「俺だって嫌だよ。でもサカズキは引いてくれないんだろう?」 なら堂々巡りをしていても仕方のないことだ。どちらかが一歩引かない限りは、これに決着はつかないのだから。 「例えば、俺が青雉じゃなかったら。」 そう言えばサカズキは目と目の間に深い皺を刻む。意味なんて解らなくて良い。ただの例え話だ。 「そうだったら、俺は自分の信念より、サカズキを取ったと思うよ。」 そうしたら幸せだろうね 部屋を後にする俺を呼び止めるサカズキの声が聞こえたが、俺は後を振り返ることはしなかった。 title by たとえば僕が back |