幸せと正義の成分は違った 頂上戦争が終わってぐちゃぐちゃになった海軍本部は今は戦争の後片付けに追われていた。それと並行して元帥がこの片付けが終わり次第引退するという声明を発表したため、その跡目として元帥への就任するのはだれかということで色々噂も飛び交っていた。実際のところ、ボルサリーノは早々にその話を上手に蹴ったようで、コングさんの押す過激な赤犬派と、センゴク元帥が押す俺・・・だったのだが。頂上戦争を終えて意気込んでいるサカズキと違い、俺は少し気を落としていた。 「戦争かぁ・・・」 戦争の引き金を作ったのはサカズキ。海兵としては正しいことをしたのだろうことは解ってはいるのだが、俺はどうしてもその犠牲のほうに目が行ってしまう。一を潰すことに全力をかけるサカズキは犠牲を厭わない。おれは犠牲を厭うがあまりサカズキほど冷酷な判断を取れないだろう。 「・・・とりあえず、俺も片付けなきゃな・・・。」 他の箇所は全壊したというところもあるらしいが、とりあえず俺の部屋は窓が割れたくらいで特に大きく損傷はしていないので片付けもそれなりに楽と言えば楽な方だ。それでも一人で二人分片付けるとなると色々面倒ではあるのだが。ぬるい風が割れている窓から通って頬を撫でる。 「俺は片付け苦手なんだってば・・・」 言ったところで、俺の優秀な補佐官殿は今は冷たい土か瓦礫に埋まっているかしているため手伝いなんかしてくれるわけも無い。頂上戦争の時に暴れた赤犬の攻撃に巻き込まれるところを見た、という目撃情報だけであとには骨も遺体も見つからなかった。まぁ今だって回収作業は進めているから時間が立てば見つかるかもしれないが。 あのとき、俺が真っ先に3人が座っていた椅子から降りた。あの時はあれが最善だと思っていた。大将の俺が出れば、後ろはあまり被害も出ないんじゃないかと思っていたのだ。まさか、俺の後を追い掛けて戦闘の苦手なシオンがきているなんて知らなかった。 「シオン、俺ね。」 守ってやるから大丈夫だってと軽口を叩いた癖に、守ってやれなかったね。追い掛けてくるなんて想像もしてなかったから忘れてたけど、そういえば君は凄く正義感の強い真面目な性格だったから上司の俺が出たのだからと後をついて来たのだろうか。 「ごめんね、」 一人で飛び出さなければ、まだ君は今日も俺と笑っていられたかな。 幸せと正義の成分は違った back |