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そして唇に縛られる


とある薄暗い城。昔は繁栄していたとされる王国に聳えていた城は今は一人のために存在していた。いや、訂正する。俺達二人のために存在するようだった。

「今日は波が高い」
「猿共の機嫌が悪い」
「霧が深いから危ない」

なんだかよく解らない理由もあったが、毎日何かしらの理由で引き留められた。無理矢理出ていくと言えば、顔をくしゃりと頼りなげにしかめて、「なら、俺を倒していけ。」と刀を抜かれたのは記憶に新しい。

「ミホーク、いい加減にしろ。怒るぞ。」
「・・・もう怒ってるだろう。」
「自覚あるなら、原因も解っているんだろうな?」
「俺が、シオンを引き止めているからだろう?」

そのくらいは解る、と紡いだ口先がぽつりと零す。

「始めから、実力で押さえれば逃げなかったか?」
「余計に逃げるわ、この愚弟。」

聞き手の反対の手で、軽く拳固を作って頭に振り下ろせば、軽い音がした。

「お前をそういう対象で見たことは、ない。」
「知ってる。」

男同士なら解ら無いでもない。海賊はたまにそう事になるのは珍しい事ではないが、そこに加え兄弟という事がある。血の繋がりが無い兄弟とかもあるが、紛れも無く俺達は兄弟だ。しかも双子なのだから間違いようも無い。

「俺は、シオンともう離れたくない。たとえ、嫌われていてもだ。」
「・・・言うほど、嫌いじゃ、ない。」

ここに留まって一月半、周りの目の無い環境で、自分なりに考えて出した結果だ。前より穏やかに弟として見れるようにはなった気はするが、それでもお前の言っている好きではないのはごまかしようがない。

「・・・そうか、俺は、愛している。」
「知ってる。」

この1ヶ月半、耳にタコが出来る程聞いた。多少引くことはあっても嫌悪感はもう無いに等しく、よくやるな・・・というのが近況だ。

「俺には、力しか、無い」
「・・・まぁ、」

そうだろうな、と紡ごうとした唇は高速でぶつかるようにただ痛いだけの噛みつくようなキスで遮られた。

「いきなり、何をするんだ。」

唇が離れたあと、口を開けば驚く程に低い声が出てびっくりした。

「・・・シオン、」

泣きそうな顔をするんだったら始めからしなければ良いものを。馬鹿みたいにこいつは昔から一直線だ。それに嫉妬をして、目を背けて来たのだから俺も大概捻くれている。

「俺にどうして欲しいんだ、ミホーク。」

親愛以上は今は無理だ、というかベッドの中を仮定したとして、どっちがどっちでも恐ろしくて想像なんか出来やしない。

「傍に、」

逃げないでくれ、と肩を抱き寄せられたので仕方なくされるがままにされながら頷く。この城は湿度も多くて居心地は良いとは言い切れないが、なんだかんだで人目もない分、自分らしくいれるのかもしれない。それに最近はミホークがなんだかんだと世話を焼いてくれるので、本当に湿度さえ無ければ住み心地も悪くない。

「無理矢理、襲って来なきゃな。」

別に傍にいるくらいは、悪くない。

「・・・善処する」
「そこは頷いておけ。」
「・・・無理矢理は、襲わない。」
「今なんか含みあるように聞こえたのは気のせいか?」
「ああ、」

怪しいが、まぁいいだろう。つまり俺がポカをやらかさなければ良いだけだ。

「我慢、する」

ギラリとした多分俺と同じ光り方をする瞳でこちらを見たミホークは酷く艶やかな表情で、微笑んだ。


そして唇に縛られる


「シオンが逃げないと言った時点で、あとは時間の問題だ。」

なぜなら、鷹の目と呼ばれた己が逃がした獲物は、この世にふたつとないのだから。



 *  *  *

『鷹の目兄弟続編で、鷹が報われる話』(もこ様)

主人公がほだされたため、シッケアールにて同棲生活がスタートした模様です。だんだんミホークさんのペースに知らずに飲まれていってるので、シオンはゆっくり陥落します(笑)リクエストありがとうございました!また機会がありましたら是非ご参加下さいね。

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