鷹の目兄弟の場合 目が覚めたら何故か城の中に居た。流れ流れて薄暗い島に辿り着いた所までは覚えているのだが、どうして俺はここに居るのだろう。 思い返しつつ、今日の行動をなぞっていく。島に着いて、うろうろとさ迷っていたら目の前に何やら変な生き物が居て、こちらを見て逃げていった。猿と思わしき奴らが逃げて行った後を追いかけて暫く歩けば、やはり薄気味悪い城が見えた。どうしたものかと足を止めれば、そういえば後ろから首筋めがけて手刀を喰らった。相手の顔はよく見えなかったが、今こうして俺が寝ていたと言うことは多分ここに住んでいる奴が俺を襲った奴に違いないだろう。 「趣味が悪い調度品。まるでドラキュラの城だな。」 湿気を含んで重たいカーテンを引けば古い埃の臭いがした。 「衛生的にもよくなさそうだ。」 「俺はあまり気にしない性質でな。」 ばっと声がする方を見れば同じ顔。そういえば七武海にいる弟が趣味の悪い住居を構えたと聞いた事がある。もしかするとここがその・・・。 「お前の世話になる気はない。」 「・・・もう既に介抱したが。」 「お前が、俺を、攻撃したんだろう!!」 「だから、何だ? 責任なら取るが。」 「俺はお前と話をすると頭が痛い。」 全く話が通じない。実力では完全に弟のが強いが、日常生活を営む会話能力では負ける気がしない。つまり言いたいのは、こいつには会話スキルが全く備わっちゃいないって事だ。俺だけ限定で発揮される能力ならなおさら、こいつ滅べばいいのに。 「シオン、飯が出来ているが。」 「・・・仕方ない、頂こう。」 「歩けるか?」 「歩ける!」 全く馬鹿にしている。弟には敵わないにしたとしても、俺はそれなりに身体を鍛えた男なのだし、重症でも風邪でもないのだから歩けないわけがないのだ。この弱者扱いを本当昔から自然にミホークは行うものだから、俺は昔まで思い出して更に腹がたってきた。 「ミホーク、俺は昔から」 「シオン、スープが冷めるぞ。」 釈然としないが、正論なので押し黙ってスープを啜った。なかなか美味いが・・・じゃなくて! 「話を、」 「そうだ、赤髪から面白いワインを貰ったんだが。」 「寄越せ。」 「シオン、」 ワインを何か言いたそうなミホークの手から引ったくり、グラスに移さずにそのまま喉に流す。じっとりとこちらを見るミホークに気分が良い。そうか、ミホークも飲みたかったんだろうな、とニヤリとする。 「赤髪が、」 「流石、赤髪だ。なかなか美味い。」 空になった瓶を片手にペロッと舌で己の上唇を舐めれば、ミホークが溜息をついた。 「だいたい半分で3日程度だと聞く。」 「何が?」 「まさか全部飲むとは、俺も思わなかった。」 だいたい一週間くらいか、なんてよく解らない事を言う弟を問い詰めれば、ミホークは恐ろしい事をしれっと言い放った。 「若返りのワイン、だと?」 「通称、こどものワインだそうだ。」 どこかの国では貴婦人が若さを保つために適量だけ飲むワインだと言うのは聞いた事がある。 「昔をやりなおしたい、と赤髪に零したらくれたのでな。」 「俺に飲ませるな、俺に!」 「勝手に飲んだんだろう。」 そう言われてしまえば、ぐうの音も出ない。かといって子供になるのなら外は危険だらけだろうし。 「まぁ、暫く泊まっていけ。」 「・・・世話になる。」 悪戯っ子世に憚る 変化のないうちにと皿を片付けている間に、見えたのはワインセラーに入りきらなかったのか、キッチンに常温で置いてあるワイン。ラベルを覗けばさっきのと同じものらしく、まだ3本もあるワインをちら、と見遣る。 「ミホーク!」 「何だ、」 「あれ捨てろ、こんなに何に使う気だ。」 「・・・そうだな、奴らにも分けてやるか。」 「話を聞け!」 back |