青雉成代と赤犬の場合 「あ、俺代理で・・・」 「なんじゃ、このちんちくりんは。」 代理で来てるんで、まで言わせてもらえず近づいてくるサカズキに顔を青くする。代理をたてて会議になんて今回が初めてになるし、古典的にクザンの背中なんかに張り付いた状態で早々に会議室入りを果たした。本誌でルフィがやっていたのだから、それなりに通用すると思っていたら普通に入ることができたので、ちょろいと思っていたのだが。流石にサカズキの目はごまかせなかったようだ。普段着ないコートをクザンが着ているのも原因の一つになるのかもしれない。だから会議室に入ってからはクザンが椅子にコートをかけ、コートのかかった椅子の内側で見つからないように大人しくしていたというのに。こういう時だけ変に勘のいい赤犬大将は目ざとく俺のコートをめくり、椅子の下に隠れていた俺を引きずり出した。 「なんじゃ、と聞いちょる。」 「・・・俺、しーらないっと。」 「ヒィッ、クザン!!裏切り者!!」 ぎゃんぎゃんと声を荒げてみたももの、サカズキはしげしげと俺を眺めた後俺を摘み上げて移動を始める。いつもだったら俺より小さいサカズキも、今となっては巨人のようだ。 「・・・ちょっと待って、サカズキ。この体制すごい辛い。」 ぷらりとした四肢に若干下の方を持ち上げられているので、頭が下がってしまっていて気持ちが悪い。ゆらゆらと無造作に揺らされれば酔いそうだ。 「なんじゃ。餓鬼が紛れ込んどると思うたら・・・シオンか。」 「・・・謝るから降ろして。」 サカズキは大股でニヤつきながら己の椅子に座ると膝の上に俺を下ろした。膝の上では隠れられないではないか。 「問題無い。今回の七武海会議は出席出来ないと全員から連絡を受けちょる。」 「は・・・?」 「今、変なものがでまわっちょるらしく、3日間ほど子供化するらしい。」 お前もそれだろう、と暗に溜息をつかれたのだが。残念ながら俺の場合はそれより不名誉なもので、かつ3日では戻らない代物なのだが・・・言うとサカズキが怒りそうだから素直に頷いておく。いざとなったらあれだ・・・体質で、とか言おう。 「鷹の目に至っては蜜月を邪魔するなとか・・・訳の解らない事を言いよるしのぅ・・・」 「へぇ・・・じゃあ、俺部屋帰るわ。」 ぴょん、とサカズキの膝から飛び降りてクザンの所に駆け寄る。会議がないならわざわざこんな空間に予定時間中ずっと居る必要性は無いだろう。サカズキも何をしに来たのか。 「待たんか。」 「・・・会議無いんでしょ。」 「その姿で3日間どうするんじゃ。」 「・・・別に。適当に仕事していつも通り過ごすけど?」 その答えにサカズキは苦い顔をしてこちらを見た。何かそれに不満でもあるのだろうか。 「困るじゃろ、いろいろ。それでじゃな・・・」 「大丈夫だって。真面目に仕事してるからさ〜。」 「・・・話にならん。クザン、単刀直入に言う。シオンはわしの所で預かる。」 「どうぞどうぞ。」 クザンがひどく興味なさそうに受け答えをするのに俺は目を見開いて驚く。事情を知っている分だけクザンの傍の方が楽だと思ったのだが、どうしてサカズキに預かられることになってしまっているのか。 「・・・俺はもう大人だよ、サカズキ。」 見た目はどうあがいても10歳前後の子供かもしれないけど。中身おっさんだよ、サカズキより若干若いくらいの・・・と言っていてだんだんなんだか悲しくなってきた。身体は子供、頭脳は大人・・・とか某アニメのキャラみたいなことを言いたいわけではないが、それなりに自分で生活くらいはできると自負している。決して誰かの世話になるほど落ちぶれちゃいないし、能力だって使えるし。大丈夫大丈夫。 「・・・わしの事は嫌いか。」 「いや、嫌いとかじゃないけど・・・。」 「なら丁度いいじゃろ。わしは明日から有給じゃし、面倒くらい見ちゃるけ。」 「俺、サカズキが怖い!!」 逃げ場を失うということ 「・・・ほれ、口開けぇ。」 「何で俺がお子様ランチなんて・・・」 「口開けんか。」 「あー・・・むぐっ、」 クザンから期間より早くゼファー先生が帰還したという連絡を受けたので、俺としてはすぐに海軍に戻って体を治してもらいたいのだが。目の前の男がニコニコとしているせいで、言い出せる雰囲気ではない。というかサカズキこいつ有給何日取ったんだ。 back |