企画 | ナノ

青雉成代とクザンの場合


「あーらら、こりゃまぁ。」
「言うな、俺も解ってるから。」


いや、罰が当たるってこういう事かぁ・・・とうなだれる。こうなってしまったのはあれだ。ちょっとした出来心ってやつだ。

「新入りの女海兵にセクハラして、子供に戻されてりゃ世話ないですよ。」
「解ってる、でもパラミシアとか能力者とか聞いてない。」

能力者じゃなきゃしても良いのか、と言われるとアレだが。それにあれはセクハラじゃなく事故である。

「つかちょっと転んで、下敷きにしただけでしょうが。」

まぁ胸が顔の前にあったからラッキーと思って押し付けたのは確かにセクハラだったかもしれないが。それにしたって能力使って逃走は無いでしょ。階級を傘に着る気は無いが、仮にも俺は大将である。

「まぁ、原因は解ってるし、ゼファー先生にも言ってあるから問題無いと思うけどね。」

「まぁ気楽に楽しむさ」なんて笑って見せれば、クザンは呆れたように項垂れるような素振りを見せる。

「・・・まぁいいけど。取りあえずあんまりそれ、他の奴らにばれない様にしなよ?」
「あー、他の奴らって?」
「特にサカズキ大将とかボルサリーノ大将とか。」
「・・・凄い馬鹿にされそうな予感。つか燃やされない?」
「たまにアンタのそう言うところ、すげーと思いますけどね。」

俺知りませんから、のスタンスで自分の分だけお茶を入れて飲み始めたクザンに、いつもどおり「俺もー!」だなんて強請ってみればドン、と強めに机に叩きつけられたコーヒーがこぼれて周りの書類を茶色に汚した。

「え、なんでクザンくん怒ってるの。」
「怒ってませんよ、まったく、そりゃあもう。」
「どう考えても怒ってるでしょ、もしかして子供嫌い?」

見るからに面倒ごとを嫌いそうな感じだろうし、もしかするとそうなのかもしれない。ロビンとのやりとりを紙面で見たことがあるから子供も結構平気だと勝手に勘違いしてしまっていたようだ。

「・・・嫌いじゃ、ないですけど。シオン大将は泣きませんし、騒がないでしょうし?」
「つまり泣いたり騒いだりする子供は嫌いって事か?」
「苦手、なだけです。」

ふぅん、と腰掛けた椅子から地面にジャンプする。椅子から飛び降りてみれば、いつもなら近いクザンの顔が酷く上の方に見えた。巨人と小人の域である。

「・・・首が痛くなるな、これ。」
「どうでも良いんで、早く書類終わらしちゃってください。」
「いつもあんまり急かさないくせに。」
「・・・サカズキ大将が部屋に来てもいいなら、ごゆっくりどうぞ。」
「それは不味いな。」

むっとして机に飛び乗る。いつもの椅子に座っていても良かったのだが、いつもの椅子では目線に机があってどうにも書類ができる環境ではない。少々行儀は悪いのだが机の上に乗ってペンを握った。

「・・・クザンくーん、」
「何ですか?」
「子供は苦手だけど俺は大丈夫ってことで、さっきのはあってる?」
「・・・シオン大将は、元の状態でも既に苦手でしたよ。」
「へぇ・・・そっか。」


それは寂しいな・・・なんて眉を下げれば、クザンが笑いながら否定を口にする。こいつは本当に口ばかり上手くて困る。そんな言葉ひとつに踊らされる自分も自分だが。

「だから、嫌いじゃないですって。」
「じゃあ好きって事?」
「・・・嫌いじゃ、ねぇよ。うん。」
「つまりそれって、」
「ああ、面倒くせぇ!じゃあもうそれで。」


シナモンの戯事


「あ、そう言えば。」

紙にペンを滑らせていれば、クザンが思い出したかのようにスケジュール帳を覗きだす。

「15時からゼファー先生の所、遠征討伐行っちゃいますよ。」
「15時!?」

時計を見ればゆうに20分ほど時刻を過ぎている。この前直したばかりだから時刻は悲しいことに正確だろう。

「あいつら、俺の事忘れてるな・・・!」
「もしくは故意に直さなかったか、ですね。」
「どうすんの、17時から七武海会議あるんだけど!」

今、クザンのスケジュール帳を見るまで忘れていたのだが、とは言わない。

「サボっちゃえば?」

いつもでしょ、なんて笑って言うクザンには悪いが、今のところ仕事にケリをつけてからの息抜きはあっても、投げ出したり、休暇日以外の会議の欠席は一度も無いはずだ。

「嫌だ、サボったら後で読む資料が増える。」

会議なら概要を聞いていれば資料に目を通さなくて楽なのだ。行かないで面倒くさい解読に時間を割くのは避けたい。

「というわけで、クザン。俺を隠しながら、俺の代理で会議出て。」
「絶対、無理。」
「大丈夫、大丈夫!」
「・・・はぁ、貸しひとつですからね。」

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