中将さんと桃鳥の場合 これは酷い。酷すぎる。もともと信じては居なかったが、神様なんていないのだと改めて再確認した。 「最悪だ、」 何等身縮んだか定かじゃないが、視界は頗る最悪だ。こんなことになった原因は幾つも考えられたが、どれもが怪しいあの男が昨日やったどれかに違いない。というか心当たりがあいつしかない。 「いっぺん躾が必要か?」 受話器を片手にダイヤルを回す。出港したのは昨日だからそんなに遠くには行ってないはずだ。 「おい、小鳥ちゃ「おい、シオン、お前なにした?」 ・・・はァ?」 慌てて遮るように聞こえた若い声。もしかして、これはもしかして。 「小鳥ちゃんも、なのか?」 「な、んだ、シオンもか。」「俺はてっきりお前のせいだと思ってたよ。」 「今からどうするんだ」と聞けば、船ももうすぐマリンフォードに着くらしい。若干あちらは俺が縮んだと聞いて、かなりテンションを上げているようだ。俺も心なしか楽しみではあるのだが、そこまで楽天的に物事の切り替えが上手く出来そうにない。 「あ、そう言えば。」 「ん?」 「ミホークの野郎が、面白い物だからってくれたやつ飲んだわ。」 「それじゃないのか?」 「あー、ミホークが好物の酒をくれるなんておかしいとは思ったんだがなァ、」 なら止めろ、と今更ツッコミを入れた所でどうしようもない。ミホークに電話をかけて詳細を聞くしか無いだろう。 「今、港着いたから、あと20分くらいでそっち着くぞ。」 「来るついでになんか子供服一式買ってきてくれ。」 「あぁ、構わねぇが・・・」 着る必要あんのか?なんてふざけた事を電話口で言う小鳥ちゃん。子供同士でなにをする気だ、なんて笑い返して、無情にも一気に受話器を下ろしてやった。 俺は彼のそういうデリカシーの無いところが余り好きではないし、単純にこの体で楽しむ気分にもなれなかった為だ。 深呼吸してから、受話器を持ち上げてミホークに電話をかけて聞いてみれば効果は3日らしく、事の顛末に彼は大きく噎せるほどに笑っていた。正直、笑い事ではないのだが、3日できちんと戻ると聞いて幾分か心配も消えた気がする。こんな珍しい事は滅多にないだろうからと尚も笑うミホークに「原因はお前だろう」と罵りたくなったが、どうにか言葉を飲み込んで会話を切った。 悪童にご注意ください 鍵だけ開けておいたドアを足で開きながら行儀悪くずかずかと上がり込んで来たのは、予想を裏切らない小鳥、雛鳥ちゃんだ。ビビッドオレンジのパーカーにライムグリーンの短パンの着こなしが彼らしい。 小さな(それでも普通の子供よりは大きい)手にいっぱいの紙袋を「好きなの選んで良いぞ!」と床に笑顔でばらまき出したので、少しだけ俺は眉間に皺をよせた。 床は汚いから・・・と前にも言った気はしたが、どうやらまた頭から抜けているらしい。仕方なく片付けようと服を手に持った瞬間、唖然とした。 「おい、これは小鳥ちゃんの着替えだよな?」 色やセンスには最初から期待はしていなかったが、明らかに摘み上げた服は女児向きだ。体格的に入りそうであるのが余計に気を滅入らせているのだが、目の前の小鳥ちゃんはニヤニヤとこちらを見るだけで弁解すらしようとする気配が無い。ぶつり、と我慢の限界を超えた堪忍袋の緒が切れたのは仕方ない事だと思う。 「ドフラミンゴ、好きなの選ばせてやる。」 「何をだ?」 「慣らさずそのまま突っ込まれるのと、指だけでイかされ続けるのと、玩具で一人遊びのどれにする?」 back |