前門の虎、後門の何とか 今持っているのは爆弾の起爆スイッチじゃないらしい。俺はそれを聞いて、やっぱり反論してしまう。 「おいメアリー。何でそんなことが分かるんだ。」 「だって、そんな危ない爆弾を持った人が大勢の人の前でスイッチを堂々と見せます?」 隙を見て取られちゃうか、もみくちゃにされて押すのがオチじゃないですか。そう言って、その子は落ちているスイッチを拾う。 「あと、集団自殺にしたいなら・・・さっさとぽちっと押すでしょうし。」 ここは一般市民も拳銃が持てる国ですよ?拳銃で脅したって、返り討ちに遭うだけ。何のメリットもない。パーンと言いながら右手で拳銃の形を作る。 「まぁ殺されたかったのなら、話は別だけど。あ・・・あと、メアリーじゃないです、瑪在 雅です。」 そう言われてしまったら、俺達は何も言うことが出来なかった。 「でも、犯人が複数だったらどうするんです!」 隣のバニーちゃんがそう叫んだので、俺も便乗して「そうだ、そうだ!」と叫んだ。 「・・・死んでる可能性は高いですね。特に鏑木さんは。」 「・・・・・・そうですね、おじさん、飛び出してましたね。」 「・・・・・・な、何だよその目は!!」 便乗がどうやら墓穴を掘ったらしい。じとーと言わんばかりの目でこちらを見てくる。 「でもよ、ほらっ!俺生きてるし!!」 「悪運があっただけじゃないですか。」 「何だと!?バニー!!」 とうとうブチ切れたのか、そう言うとバーナビーがこちらを睨んでくる。何だ、やんのか!!と言い放って、口げんかになりそうになっていたとき、鞄のジッパーを動かす音が聞こえた。 「何やっているんですか、貴女は貴女で!!」 「爆弾は2つだ・・・ってこの人が言ったから。」 そうあっさりと言って、また『雅』だと言う女の子は鞄を開けにかかっている。 「危ないですから、僕に任せてください。」 そう言って、爆弾が入っているであろう鞄をゆっくりとこちらに引き寄せ、ジッパーを開ける。 「時限・・・爆弾ですか。」 爆弾に付いている時計を確認してみると、解体する時間はかなりある。それを見た彼女は、「安全な場所に逃げれる様に時間を取っているし、自殺じゃ無いね。」と言って立ち上がる。 「何処に「おい、何処に行くんだ?」・・・おじさん。」 じっとおじさんを見ても、彼は気にもしていない様子で(本当に神経が図太い人だ)、そう彼女を止める。 「もう一つの爆弾の場所。場所の予想はしてあるんで、一応。」 そう言って歩き出した彼女を見て、解体しはじめる前に、おじさんに声を掛ける。 「おじさん、僕はこれを解体しますから・・・あの『雅さん』を頼みます。」 「・・・ったく、しゃーねーな。行ってくる!」 爆破させんじゃねぇぞ!!と言いながら、彼は彼女を追いかけた。 「あんた・・・良いのかよ、俺が横に居るんだぜ。」 そう言われ、僕ははじめて爆弾から目を離した。 「大丈夫ですよ、貴方は両手両足縛られていて、動けないでしょうし。何があっても・・・信じてますから。」 「・・・そう、か。仲間を「僕を。」・・・そ、そうか。」 犯人は可哀想な人を見るような顔をして、僕をじっと見つめてくる。 「・・・何か、悪いことを言いましたか?」 いや、何でもねぇ。と言われ、そっぽを向いてしまった彼に1つ言いたい。あんな暴走列車、信じた所で迷惑しか持ってきませんよ、と。 A precipice in front, a wolf behind. いきなり横で盛大なくしゃみをした鏑木さんを見る。 「・・・大丈夫ですか?」 「あー・・・誰か俺の噂してるな、ぜってぇ。」 ったく、嫉妬したって意味ねぇのになぁ。とか呟いている彼を横目に配電盤の扉を開ける。 「お、あったのか?」 「ありましたよー。ほらー。」 そう言って、振り返った瞬間。信じられないものが視界の端に映った。 「どういうこった・・・!あいつ、嘘言ってたのか!?」 「さぁ、よく分からないけど・・・大変な事になりそうですよ。」 そう呟いて、私は『それ』に近づいていった。 back |