火のない所に何とやら 「・・・で、結局おじさんは何でこんなデパートに居るんですか。」 「雅の話は聞いた。だがな、俺はこう言うのほっておけねぇんだよ!!」 昨日の雅さんの話、聞いてたでしょう。と尋ねると、目の前のこの人は声を荒げながら口を開く。またこの人のお節介が始まった・・・と僕は溜息をつきながらおじさんの後ろを歩く。 「バニーちゃんは別に付き合わなくったって「勘違いしないでくださいよ。僕は貴方の見張りをするだけですから。」 可愛くねぇ奴。と文句を言われ、どんどん先を言ってしまう(一応)相方に、頭が痛くなる感覚を覚えた。歩き出した僕たちの後ろで、周りをゆっくりと伺っている人物が居るなんて、その時の僕たちには分からなかった。 「と言うか、むしろここで合っているんですか?雅さんは『デパート』としか言ってなかったじゃないですか。」 「俺には野生の勘があるから大丈夫だ!」 「・・・それ、大丈夫じゃ無いです。」 「何言ってんだバニーちゃん!ヒーローには大事な大事なことだぜ!」 「貴方は野生の勘があるというか、貧乏神が憑いているんじゃないですか?」 そう言って返事を返すと、おじさんは目をつり上げてこちらを睨む。 「馬鹿言うなよ!「うごくなぁぁぁあ!!!動いたらこのデパートを爆破させるぞ!!」・・・ほら。」 俺の野生の勘はハズレねぇんだ!と豪語するおじさんを横目に、今の現状を把握する。ここにいる犯人はどうやら一人のようだ。持っているのは起爆装置と拳銃のみ。 「多分、爆弾は「・・・って、聞いてんのか、バニー!!」ええ、聞いていますから。少し黙ってください。」 多分、爆弾をどこかに隠してきたのだろう。しかも最悪なことに、爆弾の数は分からない。言うことをきかねぇと、ここをすぐに爆破させる!と叫ぶ覆面の男を見ながら、呟いた。 「これで良く分かりました。「・・・何が?」おじさんがトラブルメーカーだって言うことがね。」 今は一人だからといって油断は出来ない。何せ人質は大勢。かつ犯人が一人なのかすら分からない。 「おじさん、一旦様子を見ましょう。それから・・・!!」 ちょっと!と止める声も聞かず、おじさんは走り出した。その姿を追いかけているときに、もう何度目か分からないが、本当にコンビを解散して欲しいと思った。 本当に、ああ、もう・・・!! There is no smoke without fire. 「うるせぇ、俺は行くぜ!!おりやぁあぁぁあああ!!!」 おりやぁぁああ!と振りかぶって思い切り殴りかかると、目の前の男はひらりと避けて、代わりに拳銃をこちらに向ける。この至近距離、避けきれねぇ・・・!!そう判断した瞬間、俺は咄嗟に目を閉じてしまう。悲鳴が響き渡り、バーナビーが俺を呼ぶ声が聞こえた。(でもな、目を閉じるのは人間の条件反射だから、仕方ねぇだろ。)パーンと響く音を頭上で聞き、ああ、俺はもう駄目なんだと思うと、自然に足の力が抜ける。頭を撃たれたのだろう。米神が痛い。そこまで痛くないと感じるのは、感覚が痛みに追いついていないのだと思う。 「わりぃ・・・俺、もう、駄目かもしんねぇ。」 「あのー起きてくださいよ。まだ貴方は死んでませんよ。死んだフリは熊にも人間にも効かないんですから。」 起きてください・・・と若い女の声がして、やっとそこで俺は目を開ける。 「あれ・・・俺、死んでねぇの?」 キョトンとする俺の横で、いらない心配かけさせないでください。とぶつくさ文句を言うバーナビーに、イラッとしたのは言うまでもない。 「この人が犯人の拳銃の向きを変えてなかったら、即死でしたよ、即死。」 そう言われ『この人』と言われていた人を見ると。(多分さっき声を掛けてくれた人だ。) 「えーっと、女、の子?」 「失礼ですね、雅です。瑪在(めあり) 雅。」 そう名前を言われてもこんな18才ぐらいの女の子は知らない。バニーちゃんの方を見ても知らない・・・と言った顔をして見せた。 「警察の、雅です!」 知らないと言いたげな顔を見て、少し大きな声を出しながらそう言う彼女。確かに『雅』、と言う名前に覚えはある。だけど、あいつはここには居ないはずだ。目の前のこの子は、『雅』がいつも醸し出している威厳なんて全然ないし、第一。 「・・・嘘は、いけねぇよ?」 ボーイッシュな格好をしているが、この子は女の子だ。 「嘘じゃないです!!ちゃんと警察してます!」と反論する彼女と、昨日、冷たく言い放ったあの男とを頭の中で比べた。・・・・ぜってえ、嘘だ。比べてみて、そう更に確信した。 「・・・メアリーさん。嘘は止めて、早く皆さんと一緒に外へ逃げてください。」 「メアリーじゃなくて、瑪在(めあり)です!嘘じゃないですし、私、逃げませんから!」 一般人を避難させていたらしいバーナビーが、そう言いながらこの子に話しかける。 「警察ごっこは止めにして、さっさと外に出ろって!!」 「じゃぁ、貴方達もヒーローごっこ止めて、さっさと避難してくださいよ。後、警察呼んでください。」 「ごっこじゃねぇって!俺達はちゃんとしたヒーローなの!!!」 市民の安全を守るのが仕事なんだから、すぐに避難しろって!と言うと、その子は少し考えた後溜息と一緒に言葉の爆弾を投下していく。 「・・・今持っているのは危険じゃない爆弾ですから、避難しません。」 彼女がそう呟くと、捕まっていた男が驚愕の表情を見せた。 back |