魔法の呪文 | ナノ


笛は吹けども何とやら


「やぁだ、もう!将軍様が来てるなら、早く言って頂戴よ!!」

ほんっと雅さんってイケメンねぇ・・・とか呟きながらネイサンがこっちに近づいてくる。雅の名前を聞いて、俺は少し首を傾げながら、尋ねた。

「ネイサン、知り合いなのか?「いいえ、ちゃんと話すのはこれが始めてね。」じゃぁ、何で雅の名前知ってるんだ・・・?」
「あぁ、ちょっと雅さんが電話しているときに聞こえちゃったのよ。・・・あら、何よその目。もしかして・・・嫉妬!?」

あらやだ、アタシって罪な人間ね!!とか言いながら、俺に抱きつくのは正直止めて欲しい。(むしろ、聞こえたというか、聞き耳立ててたんだろう。)

「ロペスさんは、その方ととても仲がよろしいのですね。」 と、微笑ましいものを見るような目で俺達を見るのは本当に止めてくれ。


「あぁ、そうでした。これを渡しに来たんです。」

そう言って、私はロペスさんの目の前に大きな包みをポンとおいた。

「・・・あの。」
「はい。」
「雅、これ、何なんだ?」
「メロンです。」

こちらの手違いでヒーローの仕事の邪魔をしてしまったのでお詫びです、と言うと若干困惑しながら彼は受け取ってくれた。

「ではそれだけですので・・・失礼いたします。」

軽く頭を下げて、私は踵を返した。

「あいたたたたたた!!!え、ちょっ。雅さん!?」

もちろん彼も連れて。(まぁ、『引きずって』と言うのが正しいのだろうけれども。)

「書類回収するの忘れてましたので。・・・道案内お願いできますか?」
「これ、お願いじゃなくて、強制じゃね!?ちょっと、ネイサン、アントニオ助けて!」
「あら、雅さんって意外に強引で逞しいのね!!そう言う男ってアタシ嫌いじゃないわ!」
「そう言いながら、俺の体を触るな!!」

そのやり取りを見ながら、「ヒーロー達って案外個性派なんですね。」と鏑木さんを引きずりながら呟いた。 そう言うやり取りがあった後、彼の事務所(会社?)に戻って、また彼のペン先を目で追うことにした。

「書類作業またやるの・・・?」
「持って帰れる書類は多ければ多いほど、後々楽になりますので。・・・すみませんが、お願いいたします。」

そう謝罪してから、5行ぐらい文章が進んだ頃ぐらいだろうか。ポケットがいきなり震え出す。この長さは電話だろう。

「すいません。」
「いえ、出て大丈夫ですよ。おじさんは僕が見てますので。」

横で監視していた彼(聞いた所によると、ブルックスさんと言うらしい)にそう言われ、電話に出る。

「はい、私だ。・・・明日、デパートで爆弾事件?情報源は?・・・分かった。帰ったら詳細を聞こう。悪いが待機しててくれ。」

電話が切れたのを確認した後、私も静かに携帯を閉じる。

「明日爆弾事件が発生するんですか?」
「いえ、そう決まった訳じゃありませんが。公園にいた子供達が見知らぬ男にそう言われたようです。」

たまにこういう質の悪い悪戯とかがあるんですよね。と軽く言ってみると、どうやら手が止まっていた彼には気にくわないことだったらしい。

「悪戯じゃなかったらどうすんだよ。」
「でも、『警察』はこんな事じゃ動けませんよ。」
「何でだよ!おまえ、警察だろ!!」

そう叫ばれ、胸ぐらを掴まれた私は、息苦しいのを我慢しながら、淡々と彼に言った。

「そう言われても・・・こちらも確証が無いものに対して、働けるほど自由なものじゃないんですよ。」


We piped for you, and did not dance.


「ヒーローだって、要請がないと動けない。違いますか?」

そう続けて言うと、鏑木さんは怒った様子で口を開く。

「あんた、それ、人間としてどうなんだよ!!」
「・・・万が一のこともありますので、この事に関して一切行動しないでください。『警察として』市民の安全が第一ですから。」
「だったら・・・!「おじさん。雅さんの言うとおりです、確証のないことに首は突っ込まないで下さいよ。」

僕からちゃんと言い聞かせておきます。とブルックスさんに言われたので、軽く頭を下げて部屋から出ていく。

「まぁでも。祭囃子が聞こえたら『私として』は、踊らなきゃ損だと思うんですけどね。」

そう呟いて、取り出していた扇子を、足音しか聞こえない廊下でパチンと鳴らした。



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