魔法の呪文 | ナノ


交わらない平行線


「愛している。そして、愛してる。」

肩を掴まれて、真っ直ぐに見つめてくるこの人の目を、あぁ、綺麗だなぁ。とか思いながら見ている私。

「雅・・・。」

そう呟いたキースさんの顔は、少しだけ悲しそうな顔をしているようで。何処かがキリキリと痛むのを気付かない振りして、私は明るく彼に言った。

「50点。」

そう言うと、彼は困った顔をして首を少し傾げる。

「雅・・・駄目かい?」
「駄目ってワケじゃないですけど、何か、王道じゃないですかそれ。」
「って事は、要するに駄目と言うわけか・・・。」

それを見て、沈み始める彼をどうやったら浮上させれるか、慎重に考えながら、1つ1つ言葉にしていく。

「いや、その・・・もう少し捻りがある方が良いと思うんですよ。」

そう言うと、「じゃぁ、『愛している。そして I love you.』なんてどうかな?」とか言い始める彼に、苦笑いをしながら首を横に振った。そんなやり取りをして数分後、ふと、キースさんが口を開いた。

「・・・雅は。」
「はい?」
「雅的には、どういう言葉が嬉しいんだい?」  

そう聞かれ、自分の意見なんて聞いても参考にはならないかも知れないけど、と付け加えた後、彼に話し始める。

「・・・まぁ、自分的には気持ちが籠もっていれば・・・それでいいと思いますけど。後は相手がどう取るか次第「雅。」・・・はい、何でしょう。」

彼が話の途中で話しかけるとは、余程のことがあるのだろう。背筋を伸ばしながら、私はじっと彼を見つめる。

「雅、私は、君のことが本当に好きなんだ。そして、愛している。」

肩を掴まれた時よりも真剣に、そう言った彼に、私はその時感じた痛みがまた再発する。何かが喉から出そうになる。目が若干熱くなるのを感じた私は、急いで笑い顔に作り替える。

「それで、いいとおもいますよ。すき、なかたに、ぜったい・・・分かって貰えます。」

そう言った後、これ見よがしに時計を見て、もう時間だ。と、有りもしない予定を彼に告げて歩き出す。 私はちゃんと彼に笑えていただろうか。色んなぐちゃぐちゃした思いを気付かない振りして、帽子を深く被り直した。


ずっとずっと横並び


雅が帰っていった後、キースはすごく悲しそうに肩を小さくして俺たちの方に飛んできた。それを見て、隣にいたネイサンは呆れたように溜息を付く。

「これだから、キングオブヒーローは!本当に女心分かってないんだから!!グッドマンじゃなくて、只のバッドマンじゃない!!!」
「言っていることが分からないよ・・・ネイサン。そして、ワイルドくん、私はどうやら振られてしまったようだ。」

そう言って更に肩を小さくさせると、隣のネイサンは更にキースに文句を言い始める。
俺はその様子を見ながら、溜息をつくしかなかった。

(・・・キース、あれは雅が可哀想だ。)
(そうよ。『告白の練習に付き合ってくれないか?』なんて、普通好きな相手にやらせる!?)
(だが、好きなのは雅なのだから、他の人に練習でも言う気は無い・・・。)
(それなら、初めから練習とか言わずに言っとけよ!!!)

どんどん小さくなっていく奴と、どんどん声を荒げていく奴。それを見て、俺は今日も平和だなぁ、とか変なことを考えることにした。


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