君の隣 | ナノ


口は災いの元


店内を見渡したココが、ゼブラを見つけて異様に嫌そうな顔をした。

「・・・なんでこの暴れん坊がここにいるの?」
「んー・・・成り行き?」
「全く、変な物連れ込むのやめなよって、忠告したばかりだって言うのに。」

ふぅと息を付かれるのも大抵慣れてしまっている。知り合いの中でもかなり古い部類の友達に入るココは毎回そういいながら、なんだかんだで世話を焼いてくれる良い奴だ。まぁ奴も強かだからその分変な要求もされることが多いのだが。

「つか、連れ込んで無い。着いてきただけ。」
「・・・うん、自覚のないお前も悪い。」

にっこりと綺麗に整った顔を綺麗に微笑ませれば、こちらとしては黙るしかない。

「お前は変に男を寄せるから・・・もうちょっと警戒心持ってって言ってるのに・・・」
「・・・ごめん?」
「まぁ良いけど。見返りは貰うから。」

ふふっ、と相変わらずモデル以上に綺麗な顔で笑った彼の視線は、男に向けられる。

「ったく・・・ココ、テメェどうする気だ? 喧嘩なら喜んで買うぜ?」
「その手には乗らないよ。店の中で暴れられると彼に迷惑だからね。」

その一言に掌をぱちぱちと叩くとギッと2人に睨まれたので、すごすごと厨房に戻る。エプロンを取りあえず外して裏口から外へ回れば、ココが一瞬の隙をついたのか、ゼブラは仰向けに倒れた状態で芝生の上に転がっていた。

「もう大丈夫。とりあえず遠くに放ってくるね。」
「え、そういう持ち帰り方するんだ・・・」
「え、それ以外ってあるの?」

説得して、もしくは腕を引いて帰ってくれるものだと思ってたぶん、それは色々衝撃的だ。キッスの背中に申し訳なさそうにゼブラを乗せて、ココは笑う。

「で、報酬は今夜でいいかな?」
「あー・・・さっき食材が底をついたから、明日でも良い?」
「じゃあゼブラどこかで降ろすついでに、なにか食材買ってくるね。」
「了解。食べたいものの食材買ってきてレシートだけ頂戴。後で支払うから。」

あらかた約束を取り付けた所でココが笑ってキッスに飛び乗る。

「じゃあ行ってくるけど。その間にほかに変なの連れ込まないでよ?」
「お前はなんの心配してるんだ、大丈夫だっての。」

その答えに苦笑してキッスは大きく羽ばたきはじめて、空へ消える。彼等の姿がだいたい見えなくなってから、ふぅと息をついた。

「まぁ、暴れなきゃ別に問題無いんだけど、危ないのは勘弁だし。」

いつこちらに被害がくるかも分からない客は困るからなぁ、と呟いて止まる。

「あ、皿洗わなきゃ。」

先程食い散らかしていったゼブラの食事後の始末をしていない。夜にココが食事をするというのだから今から掃除しないと時間が無いことに気付く。

「まぁあれだけ美味しそうに食べてくれれば、いいか。うん。」

汚れた皿をとりあえず洗って床に散らかった食べかすを片づける。飛び散った肉汁は・・・うーん・・・拭くしかないか。

「やっぱ労働費とかいってもうちょっと金額取っておけば良かったかも。」


口は災いの元、後悔先に立たず



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