君の隣 | ナノ


突き刺さったのは、


「よぉ・・・?」

男は自宅の前でにたりとこちらをみて笑いながら立っていた。

「は? 何でここにお前が居るんだよ・・・!」

ストーカーだとしてもあの場で俺は名乗っても居ないし、こいつだってあの場においてきたのだから付いてこられたワケでもないのに、何故こいつは俺の家が分かったのだろう。正直これから出かける予定があるので、この厄介な来客に構っている暇など俺には無い。

「随分とこの前は舐めたマネ、してくれたじゃねーか・・・!!」
「はぁ? 助けてやって感謝されるいわれはあっても、怒鳴られる筋合いねぇんだけど。」

つか、お前しゃべれたんだ?前回喋らなかったから話せないのかと思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。

「俺の獲物横取りしやがって・・・!!」
「理不尽! つかそういうのって早いもの勝ちだろうが。」

つか俺、そろそろ時間的にまずいんだけど、と言い出せば男は顔に血管を浮かべる。俺もそろそろ血管きれる勢いでこいつぶっ飛ばしたい。

「調子のってんじゃねェよ・・・!!」
「・・・・・・。」

先に拳を出してきたのは男。何故そうなる。トン、と突き出された腕の上に飛び乗り、走る。今日の依頼は朝一の日差しの中でしかつみ取れない貴重な花の蜜である。男と対決している暇なんてないんだ、と男を振りきって走ったおかげで朝蜜は一応ゲットする事が出来た。ただし、本当にギリギリだったためつみ取れた蜜の量は少なかったのだが。おかげで依頼分の他に店に卸す用の蜜まで手が回らなかった。それに少し気を落としながらも家に帰ろうかと思った矢先、日差しを自分から遮る影法師が出来る。

「おい、」
「しつこい男はモテ無いぜ?」

どういう仕組みかはしらないが、男はどうあっても俺に付いてくる気のようだ。ここは大人しく一発打たれて死んだ振りしてりゃ丸く収まるか・・・? でも一応自分も客商売もしてるもんだから、顔だと一大事だしなぁと考えていたら、男は頭を面倒くさそうに掻いた。

「お前、名前は?」
「・・・そう言うときは自分から名乗れ。」
「・・・ゼブラ。」
「そうか、俺はギン。」

ゼブラ、と名乗った名前に聞き覚えがある。俺の記憶が確かであるならば、それはきっとグルメ四天王の一人で間違いない。

「おま・・・ゼブラって有名人じゃん・・・。そんで、そんな有名人さんが俺に何か用?」
「・・・・・・。」
「また無言かよ・・・とりあえずお前どーすんの?俺帰るけど。」
「・・・・おぅ。」

それは肯定と見なしても良いのか。不明な回答を返されたのだが、とりあえずワールドキッチンの卸売商にこれを渡してからで良いだろうか。とりあえず何も言ってこないから良いとするか。

「・・・っち、」

前言撤回。舌打ちは結構されてるけれども。舌打ちするくらいなら付いてこなければいいのに、とは言わなかった。

正直、失敗したと思った。よく考えればゼブラって第一級危険人物に制定されてたなぁ、と思い出したのはワールドキッチンの入口まで来た時に周りの店のシャッターが閉まる音を聞いてからだったからである。


突き刺さったのは誰の視線だったか


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