言い訳アルコール びっしょりとまだ濡れている身体にバスタオルを有無言わず巻き付けられ、そのまま肩に担ぎ上げられる。 「へ、ちょっと俺まだ濡れてるし・・・!」 「後でもう一回お風呂入れてあげるから。」 「別に風呂はもう良いから・・・!!つか何するつもりだコラ!!」 「・・・品が無い事は言いたくない主義でね。」 その回答に口の中で一瞬言葉が止まる。にっこりと微笑むその綺麗な顔も嫌いじゃない。嫌いじゃないが、今となってはただ恐怖の対象でしかない。 「まじ冗談・・・それすっごい怖いわ。」 「これが冗談に聞こえてるんだったら、君は存外頭が悪いって事になるね。」 ぼふり、と背中に感じたのはいつも自分が寝ているベッドそのもので。巻かれたタオルに嫌な汗がじっとり染み込んでいく。正直これ、かなりやばい状況なんじゃね? ぎしり、とベッドに押さえつけられたのは腕。あんな細い腕で、と思って腕をみやれば、そこにあるのはどれだけ細いと思っていてもしっかりとした男の腕。 「やっぱり、やめない?」 「やめない。」 「きっと後から後悔すると思う。 それでも?」 だって、いくら細身だといっても、彼も俺も男で、色々問題だって有るわけで。ココの事は嫌いではない。受け入れても良いと思っている。でも、彼の気持ちって言うのはそんな軽い物でない事も知っている。知っていながら、放置していた。全ての原因は俺だ。ココが今、少し泣きそうな顔をしてるのも全部知ってる。 「・・・ココ、ごめん。 俺・・・」 「君が僕を受け入れられないのは、分かってるよ。」 僕と毒は切り離せない。毒人間の僕は周りに危害しか加えられないのだから、こんな身で人を好きになったのが間違いだったのだ、と嘆く彼の頬に手を伸ばす。 「ごめん、俺が全部悪いんだ。」 「えっ・・・?」 「寂しいからって、優しいココに甘えてただけだったから。」 だって、俺には甘える資格とか、ココに好きって言って貰う資格すら無かったのに。その彼の口から零れる"愛"の意味すら分からないのに、彼を受け入れて良いはずがない。 「でも、ココの本気を軽い気持ちで受け入れて良いとは思えない。」 そのくらいの分別は付いてるつもりなんだけど、と笑えばココは顔を歪ませた。 「ギン、 そこに付け入られるって分かってる? 」 「付け入ってくれてもいいよ、ココを引き留めておけるならそれでも。」 「・・・本当、狡いなぁ・・・」 ちゅ、と唇に再度口付けを落としてから、ココはそのまま自分を抱きしめる。 「今日は、まだしないよ。 ・・・アルコールの所為にされたくないから。」 「そっか・・・、」 ふと着いた息は、彼にはどちらに聞こえたのだろうか。残念に聞こえたのだろうか、それとも安堵に聞こえたのだろうか。そのどちらでも無ければいいなと思いつつ、彼を見つめる。 「・・・もう寝なよ。明日も早いんだろう?」 「うん、なぁココ。」 布団をそのまま掛けて眠らせようとするココに制止をかける。 「お前はどこで寝る?」 本当はベッドはココに使わせようと思っていたのに、今はすこし湿ってしまっている。ここを譲るのはあれだ、でもソファもどうなのだろう。 「・・・ベッドはやめておくよ。冷静でいられる自信がないから。」 「わかった、」 アルコールの言い訳 back |