寡黙な詐欺師 | ナノ


そろそろ、仕事です


乾燥地帯と言うことでか、喉の奥がカサカサする。 タプタプと波に揺れる音が聞こえるのに、酷く乾燥しているように感じたのは久しぶりかも知れない。水分を軽く口に含んだ瞬間、船に打ち当たってはまた引いていく波に、視線を奪われる。

「泳いだら気持ちよさそうだなぁ・・・。」

海に入りたいという症状が出てしまうのも、仕方がないと思う。何となく手摺りから身を乗り出して覗き込むと、衿を掴まれて引き戻されてしまった。

「街に着いたって言うのに、自殺すんのか、てめぇは。」
「この船で海に落ちてそうなるのは、多分スモーカーさんだけだと思います・・・。」

そう言って、タラップをゆっくりと降りていく彼の後ろ姿を見ていると、「シルフィン。」と名前を呼ばれる。

「何でしょう?・・・あ、行ってらっしゃいって言ったほうが良かったんですか?」
「そう言う訳じゃねぇ。ここには水があるらしい・・・雑用に水の買い出しを頼もうと思ってな。」
「!・・・あ、ありがとうございます!支度してきます!!」

ったく、たしぎもそう言って部屋に戻りやがったし・・・。あんまりおれの気は長くねぇんだ。急げよ。 そうぶつぶつ言いながら止まりもせずに降りていくスモーカーさんに、私は走って部屋に戻った。

* * *

そうして近くにあった酒場屋さんで、一息つくことにした私達。 店員さんに注文したものを口に入れながら、たしぎちゃんとスモーカーさんは話し始めた。

「スモーカーさん、何故、この“レインベース”だと?」

たしぎちゃんの問いかけに、勘だ・・・。と言って、麦酒を喉に流し込む。昼間っから、酒を飲んで良いのかと言いたくなったが、まぁ・・・怒られたくないので言うのを諦めた。 その代わりに、ジュースを飲み干して、気が付かない程度に五月蝿い客に対して、軽く睨み付ける・・・あれ。

「あの、スモーカーさんスモーカーさん。横、横。」

私の横はたしぎちゃんだったので、スモーカーさんの肩を叩くことは出来なかったので、私は小さく声をかける。

「じっと待つしかねぇんだ・・・なんだシルフィン、横? ・・・・!!!」

話をしているのを邪魔するのは忍びないが、横にいる2人に気づいて欲しかったので知らせたのだけど。 どうやら、あちらさんも気が付いたみたいだ。目を丸くしてこちらを見ている2人を見つめながら、そう思った。

結局口に含んでいた水をぶっかけやがった麦わら達を追ったスモーカーさんとも、たしぎちゃんとも別れてしまい。

「これからどうしようかな・・・。」

そう独り言を呟きながら、ぶらぶらと歩く。

「『例の犯罪組織とクロコダイル』・・・か。今ならスモーカーさん居ないし・・・好都合ですよね。」

さっき話していた内容を繰り返して、ゆっくりと正面を見つめる。
中央にあるピラミッドを見つめながら、そう呟いた。


財宝探しはお手の物です
 

「ではでは、お仕事、開始しましょうか。」

サービス残業代って付くんですかねぇ・・・。とか思いながら、この地方の服装を着て、ゆっくりと足を進めた。


  back


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -