寡黙な詐欺師 | ナノ


結局甘い


「おー・・・スモーカーさんって意外と固くないんですね・・・あー!固くしないでくださいよ!」

固いのって、凄く枕にしにくいじゃないですか。とか、ぶつくさいいやがるシルフィンを見下ろしながら、思ったことを吐き出した。

「何でてめぇの頭がおれの膝の上にあるんだ?」
「それはですね、貴方が私の大事な生息地帯に進軍してきたからです・・・あ、痛いです、固いです!!」

地味に動くシルフィンの頭を押さえつけ、溜息をついた。大事なことを1つ言いたい。ここはおれの部屋だ。

「知ってますよ!でもね、ソファー2つも占拠されたら、私の住む生息地が絶滅してしまいます!」

机の向こう側にある同じソファーの上には、書類が入った紙袋や、何かしらが乱雑に置いてあって、まぁ、確かに占拠した。とも、言えないことはないが。

「おれが思うに、犯罪者は絶滅しても大丈夫だと思うんだがな・・・。というかシルフィン、何でまたここに居るんだ。」
「私は良い犯罪者ですから・・・だと・・・いいなぁ。」

なんでそこで良い犯罪者なんて単語が出る。むしろ、犯罪者に良いも悪いもねぇ。かつ、理由にすらなってねぇ。 しかもそこまで言うなら、最後までハッキリ断言しろ。

「でも、あの、今日は寝に来ただけじゃないですから!!」

『今日は』と言うシルフィンに、いささか頭痛がしてくるが、何処かこんな奴に慣れてきてしまっている自分もいる。

「で、何のようだ。」
「お誕生日おめでとうございますです!!」
「去年もそういやぁ、こんなことあったな・・・。」

もう少し距離が遠かった気がするが。(こいつは本当に色々覚えた方が良い。)この前みたいなへまはしませんよ!とか顎の辺りから響いてくる声を聞きながら、書類を点検する。(むしろお前は早く退け。)

「今回は、美味しい珈琲豆と蜜柑がプレゼントです!!」    
「・・・2つとも、お前が飲んだり食ったりするためか?」
「い、いや!そう言う訳じゃ「本当はどうなんだ。」片方はそうですけど、片方は違います。」

豆の方は私が来たときに飲めるようにですけど、蜜柑は本当に良い蜜柑で、スモーカーさんのプレゼントなんですから!!とか言うシルフィン。結局、回りに回ってお前のプレゼントじゃねえか、とか思ったが、どうしていきなり蜜柑なのかとふと思う。

「おいシルフィン。何でいきなり蜜柑だ?」
「いや、たまに見るとスモーカーさんが暇そうに地面に石を積んでるんで。蜜柑なら積めるし、お腹が空いたら食べられるし、良いかなって思いまして。」
「おれがそんなに食いしん坊に見えるか、おい。」

後、食い物で遊ぼうとするな。そう思いながら、もう既に点検した書類の上に蜜柑を積み始めているシルフィンのプレゼントのお礼にと、拳骨1つ、くれてやった。

「向こうの荷物退けても良い・・・寝るなら向こうで寝ろ。」
「むー・・・いや、です。おきてます。」

起きているという割には、目がもう閉じてしまっている。

「ったく、向こうでならのんびりでも何でも、ゆっくり出来るだろ。」 そういうと、うっすらシルフィンの目が開いて、俺の方を見る。

「あったかい、ですし。ここからなら・・・しょるい、みえないですし。」

本当に、律儀な奴だ。そう思いながら、ぽつぽつ話しているシルフィンの話を聞いてやる。

「すもーかーさんのしかい・・・にはいると、じゃまになりますし。やさしいですし・・・ごめんです、もうねむいです。」

最後に「おたんじょ−び、おめでとうございましたですー。」とかほざいて、こいつはどこかの世界へ飛んでいった。

「邪魔・・・なぁ?」

視界に入らなくとも、御陰様で書類は一枚もまだ進んでねぇ。

「ったく・・・シルフィン、普通ここで寝るか?」

そう呟いてみると、眠りが浅いというこいつは、うっすら目をまた開けた後、またすぐ閉じた。


起こすに、起こせぬ


書類は頭に入ってこねぇ、煙草を吸おうとも思ったが、途中でその手も止まる。時計の音と、たまに身じろぐこいつの音が部屋を占拠していて、おれは自分の部屋なのにどうにも落ち着かない。

「おれのペースを崩しやがって・・・。」

軽く舌打ちしたい気持ちに駆られながら、そばにあったコートでシルフィンを被せ、気を取り直して再開しようとしても、結果は同じだった。今度、本気でこいつの警戒心をどうにかしないと・・・とか色々考えていると、目に付いたのはシルフィンが持ってきた蜜柑箱。

「・・・・・・。」

(失礼します!書類の追加です・・・・・・あ、あのー准将?それ、息抜きですか?)
(あぁ、貰ったからな・・・気晴らしにやってる。)
(それ、難しいんですか?)
(・・・・・・あ?)
(い、いえ・・・先程から2個目で失敗していたので。)
(・・・・・・おい。)
(はい!?)
(・・・長話させて、悪かったな。行って良い。)
(え、あ・・・は、はい、失礼します!)
(あと、忙しいだろうが、なるべく静かに来てくれ。)
(!!気が散りますもんね!すいませんでした、みんなにも伝えておきます。)
(・・・・・・・・・・・・・。)



  back


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -