寡黙な詐欺師 | ナノ


有効利用方法


「あ、スモーカーさん。おかえりなさー・・・・・・!?え、ちょ!!」

おれの部屋へと続くドアをぬけると何か居た気がしたので、高速でドアを閉め直した。

「え、スモーカーさん!!ちょっと、何で閉めるんですか!!」

貴方の部屋でしょう!と何でか知らないが、シルフィンに怒られる。(だがその後すぐに、
じゃぁ、何でおれの部屋にシルフィンが居るんだ?と聞いたら、そいつは何も言えなくなった。)

「でだ、今日は何だ。何か盗りに来たって言うなら、おれは容赦しねぇ。」
「そうじゃなくて、今日は物を渡しに来たんです。」

どうせ上から頼まれた書類のことなのだろう。おれは「なら、こんな所で道草しねぇで、さっさと行って来い。」と言った。

「いやぁ、そうでもなくて・・・「さっさといえ。」はい、すいません。」

何かを濁しながら話すシルフィンに少し声を荒げて言うと、すぐに話し始めた。

「えーっとですね、今日って3月14日じゃないですか。だからスモーカーさんにお誕生日おめでとうございますって言いたくて。」
「・・・今日だったか?」
「はい。あ、でも犯罪者から物を貰うって駄目じゃないですか?・・・ほら、賄賂みたいな。」
「・・・・・・シルフィン、お前は一体何を渡すつもりだ。」

そんな、黄金のお菓子とかじゃないですけど!と、弁解してくるシルフィンにおれは口の端を少しあげて笑った。

「じゃぁバレンタインのやつも、おれは軍法にひっかかっちまうな。」
「あー・・・じゃぁガープさんとか、たしぎちゃんとか他の方も引っかかりますか?」

テメェは他の奴にもあげてたのか、と思ったが。まぁ、シルフィンの事だ何も考えてないのだろう。 おれはシルフィンに小さく溜息を付くと、「まぁ、だまっとけば良いんじゃねぇか?」とそいつに言ってやる。

「じゃぁ、これも黙っててくださいね!」

ニコニコと笑っておれの手に何かを握らせる。・・・見ると封筒だった。

「スモーカーさん、お誕生日おめでとうございます。」

そう言ったあと、シルフィンは「開けてください。」とおれに催促する。

「・・・・・・・・・シルフィン・・・なんだ、これ。」
「あー・・・駄目でした?スモーカーさんの欲しい物が分からなかったので、取りあえず無難にいこうかと思ったんですけど。」
「これが、無難か?」
「え、違うんですか?」
「取りあえず、おれにこれを渡すのは止めた方が良いと思うぞ。」


何も考えずに渡してはいけません 


【無期限で使用可能:一回限り何でも券】
まぁ、シルフィンらしいっちゃぁ、らしいんだが。(ご丁寧に5枚綴りである。)

「これで『お前を捕まえたい』っていう願いを叶えろって言ったらどうするんだ。」
「・・・・・・あ。」
「やっぱり、何も考えてねぇのか・・・。」

でも、クザンさんがこの方法が無難で喜ぶって言ってましたよ。とシルフィンが訂正のように言う。(確かにあいつは喜びそうだ。)

「え、あ、じゃぁはい。」

そう言って渡されたのはいつもおれが吸っている葉巻。理由を聞くと、この券が駄目だった時用の奴らしい。普通にこれでも良かったんだが、本人曰く、「普通じゃつまらない」らしい。

「まぁ・・・ありがとうな。」
そう言うと、シルフィンは嬉しそうに笑って「どういたしまして」と言った。


(で、その券返して欲しいんですけど・・・。)
(あ?コイツはおれのモンだ。)
(えー!要らないんじゃないんですか!?)
(誰もそんなことは言ってねぇ。)

さっき貰った葉巻を吸いながら、ソファーで叫ぶシルフィンを横目に、この券の有効利用の仕方を考えていた。


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