寡黙な詐欺師 | ナノ


羊の夢


いつもより粗っぽくドアを開け、自分の体重を近くにおいてあるソファーに押しつける。・・・疲れた。まぁ、いつものことなんだが。ソファーに座っていると、肩の疲れが少しとれたような気がして、少し仮眠を取ろうと目を瞑る。すると、もぞもぞと机の向こう側においてある見知った布団が動いた気がした。

「んー・・・こんにちは、すもーかーさん。・・・ふぁぁ。」

布団の中からのそのそと這い出てきたのは、想像していた人物で。

「シルフィン、なんでテメェが此処にいるんだ。」
「・・・あ、今3時じゃないですか。んー・・・ん、おやつあるんで一緒に食べませ「人の話を聞け。」

そう言うと、今にも閉じてしまいそうな藍色の瞳がおれの方を見る。そしてシルフィンは「・・・ん?何か言いましたか?」とゆっくりと首を傾げた。

「・・・もういい。だがなシルフィン、その布団は何処から持ってきやがった。」
「あー。スモーカーさんのベッドからお借りしてます。凄くもふもふしてて温かくて、私は凄く幸せです。」

おれはテメエの幸せなんて、これっぽっちも聞いちゃいないんだがな。(もうこいつに何を言っても無駄な気がしてきた。) シルフィンに見せつけるように大きな溜息をわざとらしく1つ零して、そいつに何か言ってやろうと顔を上げるも。

「・・・なんでいねぇんだよ。」    

ソファーに雪崩れるように置いてあった布団も、さっきまでいたはずのシルフィンも目の前に見えないので、動きのおせぇ首を取りあえず回してみる。

「今お湯湧かしているんで、もう少し待っててくださいよ。美味しい豆が手に入ったんです。」

そんなおれの様子を見たのか、後ろからそう声がすると、そいつは又おれに話しかける。

「ちょっとでも甘いものを食べて・・・休んでくださいよ、スモーカー“大佐”。」
「おれは甘いのは苦手だ。」

甘さ控えめなんで大丈夫です。と、目の前に置かれたチーズケーキ。それを見たおれは観念して、シルフィンが珈琲を持ってきてくれるのを待つことにした。

シルフィンが珈琲を持ってきて、そいつ曰く『少し遅めの珈琲タイム』を満喫していると、目の前の奴がのんきにあくびをする。

「・・・眠みぃのか?」
「まぁ、眠いです。二度目のお昼寝タイムに突入したい気分です。」

それを聞いたおれは、適当にそうか。と呟き座り直すとかさりと音がしたので、視線をずらすと。少し皺になった書類に気が付いた。そう言えば此処に来たときに、書類をどこかに置いていた気がする。(多分、置いた場所が悪くて、座ったときに書類が皺になったのだろう。)皺を付けてしまったそれを見て、シルフィンに聞こえないように小さく溜息を付いた後、おれはそれに手を伸ばした。

「あ、駄目ですよ。」

と言って、それをシルフィンは取ってしまった。そしてこいつはゆっくりと、おれの顔を触る。 シルフィンの手がおれの眉間辺りに来ると、ポツリと呟く。

「ほら、眉間に皺。酷い顔、ですよ。」

仮眠した方が良いですよ。と言って、座っていたソファーを空ける。

「そんなに酷い顔、してるか?」
「してます。寝ましょう。ソファーなら大丈夫です。」

そう言って、こいつはドアの方へ歩き出した。

「待て・・・何処に行くんだ?」

おれがそう言って引き留めると、さも当然のように気にいらねぇ言葉を発した。

「寝てると私、邪魔じゃないですか。だからドレークさんの所に行くんです。あそこでは寝れませんけど・・・まぁ、さっきまで寝てたんで良いです。」
「・・・気にいらねぇな。」

こいつの口から、他の奴の名前が出ることに少しだけ不機嫌になりながら、シルフィンの隣にある丸まった布団を拾う。 

「シルフィン、おれはこれから寝ることにする。」
「あ、ほんとですかー。じゃぁ私はこれで「シルフィン。」はい?・・・っ、うおぁ!?」

イライラするぐらいに笑っていたシルフィンをベッドに投げ飛ばし、その隣におれも寝転がる。

「え、あの、スモーカーさん・・・?」
「シルフィン、テメェは眠りが浅ぇんだったな。」 
「あ、はぁ。」

そう聞いたのを合図に、おれはシルフィンと自分に布団を掛ける。

「俺は寝る。お前も此処で寝てていい・・・だが、誰か来たら起こせよ。」

そう言うと、シルフィンは笑って「はーい。」と言い、俺はゆっくりと目を閉じる。よく寝れそうだと思いながら。 正直、誰も来ないで欲しい 

「スモーカーさん・・・寝る前に一言言って良いですか?」
「・・・・・・どうした。」
「布団の隙間が寒いんです。なので・・・もうちょっとスペースお借りします。」

そう言って、目の前のこいつはこっちに近づいてきた。


羊の夢


(!!!な、なんだテメェは!)
(だって・・・くっついたら、間が無くなって風が来ないですよ?)
(そう言う問題じゃねぇ!!)
(人肌って、温かくて寝やすいんですよー。)
(だからって・・・近づいてくんな!!)

いつの間にかおれもこいつも寝ていて、疲れも溜まっていたのか、よく寝れたと思う。だが・・・。

「・・・んー。」

おれに抱きつきながら爆睡しているこいつは、もう少し何か持った方が良いと思う。
俗に言う危機感とか。

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