寡黙な詐欺師 | ナノ


とっぷ・しーくれっと!


3時ちょと前になり、わしは急ぎ足で自分の部屋へと急ぐ。なんで急ぐのかというと、3時のおやつを食べる為だ。そして、勢いよく扉を開ける。部屋には誰も居ないのを確認すると、そわそわしながら机に座る。これはある人物に合うためでもある。

そうしていると、誰かがドアをノックする音がした。 


「失礼します、ガー「・・・なんじゃ、期待させおって。」えぇ!?僕、何か悪い事しましたか!?」

ゆっくりと入ってきたのは、自分の部下のコビーである。それを見た途端、凄く盛大なため息をついた。(まぁ、お菓子を持ってきたコビーは何も悪くないのだが。)

「えっと・・・誰かいらっしゃるんですか?」
「まぁ、そんなところだ。」

コビーの問いに答えると、『なら、電伝虫で呼べば良いんじゃないですか?』と、反論される。

「海軍のやつじゃったら、それでも良いのだがの。」
「え、じゃぁ。」
「あぁ、海軍の人間じゃない。」

コビーが持ってきてくれたお菓子を頬張りながら、そう呟いた。電伝虫で呼ぶ事も出来ないし、かと言って毎日来るというわけでもない気まぐれな人物を、何とか出来るわけでもない。

「一体誰なんですか・・・その人。」
「あぁ、お前もよく知っとるじゃろ。“赤時計”じゃ。」
「・・・あ、の・・・良いんですか?そんな人入れて。確か怪盗じゃ、ありませんでしたか?」
「ん?あ・・・今の、聴かなかったことにしてくれんか。」

ええぇぇ、と困ったようにしていたが、「何もされてないんでしたら。」と渋々了承してくれる。

「でも、なんでまたそんな人とお茶会なんて・・・。」

お茶会なんて、優雅なもんじゃないがの、と心の中で呟きながら、あいつと合った頃を思い出した。確か、わしがあいつの毒入りピザを食べたことから、始まった。(まぁ毒と言っても、ワライダケだったんだがな。)その後お詫びとか言って、3時にお菓子を持ってきてくれたことがきっかけで、今現在に至る。時計を見ながら、あいつは何時も時間には五月蝿かった事を思い出す。

「まぁ、色々あってな。だが、今日はもう来ないかの。」

わしがそう呟いた途端、近くにあった時計が3時を知らせた。2人は時計を見ながらゆっくりと鳴る音を聞きながらぼーっと立っていた。

「この時計、正しくないですよ。・・・知ってましたか?」
「実はあと3秒もあるんです。」


そう言って、首を傾げているガープさんを横目に見つつ、コビーは腕時計を見る。 
そして、丁度時計の秒針が長針と重なったとき、コビーは自分の首の皮を掴んで引っ張った。

「こんにちは、ガープさん。一昨日ぶりですね。」
「シルフィン!?」

驚く自分をみて、シルフィンは声をかみ殺して笑う。コビーの声なのに姿がシルフィンと言うのが、少し違和感を感じた。

「くくっ、いやぁ、やっぱり変装って凄いなぁ!」
「・・・シルフィン、わしをからかうのも対外にしてくれ。」

はいはい、と呟きながら、こいつは首の辺りから何かを外して(何かはわからんかった。)わしを見て笑いかける。

「でも、何か嬉しいな。誰かが自分を待ってくれるって・・・久しぶりだなぁ。」
「・・・待ってる方は、辛いんだが。」
「あぁ。ガープさんはおやつ好きだもんね、うん、ごめん。善処します。」

それだけじゃないと言おうと思ったが、出かかった言葉を噤み。あまり反省しとらんだろ、と呟けば、そんなことも無いですよー?と笑って返される。(と言うか、わしはどういう感じに思われてるんだ。)

「今度からは、きちんと来るときは手紙を出します!」
「・・・本当に出来るかのぉ?」
「馬鹿言わないで下さいよ。私は約束は守る主義なんです。」

こんな所に出入りしているんですから、手紙ぐらい出せますよ。そう言われ、わしは「期待せずにまっとるよ。」と呟いた。

「あ、今。絶対できるわけないって・・・思ったでしょう!?」

コビー・・・もといシルフィンは持ってきたお菓子を、さも当たり前のように頬張りながら言った。 (今思えば、お茶が2つある時点で解りそうなもんだ。)

「手紙出したら捕まるかもしれんぞ?」
「捕まりませんて。」 
「シルフィン。忘れとるようだが、わしは海軍だぞ、仲間に知らせるかもしれん。」
「!!・・・あーそうかー・・・・・・ガープさん。」
「ん?どうしたシルフィン。」

そう尋ねると、わしのお菓子とお茶を指さしながら。

「食べないなら、私、食べますけど。」 
「食べるにきまっとるだろうが!!」

わしのお菓子に伸びていた手を軽く叩いて、急いでお菓子を掴む。

「全く、人が心配しとるというのに・・・。」
「あははははは、すいません。食べないと思って、つい。」
「シルフィン、『つい』で許されるなら、海軍はいらん!!」

そう言うと、「すいません。」と笑いながら、また謝られる。(絶対悪いと思っとらんだろ。)・・・楽しい時間というのは早いもので、気づいた頃には4時30分を回っていた。

「あぁ、もうこんな時間ですか。・・・時間が経つのは早いものですね。」
「何だ、もう帰るのか?」
そう聞くと、「はい。あまり長居すると、帰れなくなりますから。」とシルフィンは答えた。
「そうか。・・・まぁ、気を付けて帰るんだぞ。」

解ってますよ、と言いながら、シルフィンは扉に手を掛けた。するとその時、シルフィンは一度振り返ってこう言った。

「もし、私を捕まえるんでしたら、私は・・・出来ればガープさんの手で捕まりたいですかね。」

とても楽しそうに言い、それを聞いて何も言えないわしを一度見た後、シルフィンはドアを閉めて出ていった。廊下に響く足音が聞こえなくなった辺りに、わしは大きくため息をついて、大きく呟いた。

「わしがお前を捕まえられるわけがないだろう。」


矛盾したお茶会 


次の日。スモーカーから手紙が届き、何か用があったのかと考えながら開けてみると。

『拝啓 ガープさん。そしてごめんなさい、スモーカーさん。』と言う文字が目に飛び込んできて。そして、下に続いていた文章に、わしはゆっくりと笑みを浮かべる。

「どうかしたんですか?なんか、すごく嬉しそうですけど。」

近くにいた青雉にそう言われたので、わしはにこやかに答える。今日も、海軍本部は平和かもしれない。

「今日、わしの部屋の時計を直しに来るみたいでな。」


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