寡黙な詐欺師 | ナノ


郷にはいらば


「おーい、シルフィンこっちだ!こっち!!」

そうお頭に呼ばれて、私は呼ばれた方へと向かった。

「で・・・私、何で呼ばれたのかいまいち解らないんですが。」

いきなり電伝虫で『今日中に来れるか!?』と言われ。(まぁ、近かったので来ることが出来たけれども。)なぜだか知らないが、私の横では円満の笑みで酒を飲んでいるお頭さん。

「シルフィンお前、今流行のツンデレってやつか、それ?」

と、何でか知らないけれど頬をぶにぶにと突っつくヤソップさん。(と言うか、つんでれって何ですか、何かの動物ですか?)

「今日はお前にとってもめでたい日だろう?・・・今日ぐらい素直に言ってやれ。」

なんてベンさんにまで言われる始末。私・・・何か忘れてましたっけ? 取りあえず、バレンタインやホワイトデー、雛祭りではないことは確かだ。他にあるとすれば、何だろう。考えた末に、私はにこやかな顔をしてヤソップさんにこう言った。


「何でもない日おめでとう!!!!」


一瞬、周りの温度が下がった気がした。

「お前はどこぞの不思議の国の住人だ!?」

そう言うと、「あれ、違うんですか?」と焦っておれに聞き返してくる。

「シルフィン、今日は何日だ?」
「3月9日ですけど「俺の生まれた日だ。」・・・はい、そうなんですか?」

で、何ですか?と聞いてくるシルフィンに、いささか目頭が熱くなるのを感じながら、「そこは、『お誕生日おめでとうございます』って言うところじゃねぇのか?」と言う。

「え?・・・私、元旦に言いませんでしたっけ、それ?」
「・・・・・・・何で元旦。」
「え、だって、お正月にみんな一気に年を取るんじゃないんですか?」

一気に周りがどよめく。そして、あちらこちらから『ワノ国の習慣』と言う単語があちらこちらから聞こえてくる。ヤソップがおれを見てあたふた慌てているのを横目に、おれはとても楽しそうに笑ったらしかった。

「・・・シルフィン、誕生日ってのはなぁ。こっちの方では大切な行事なんだ。」

何にも知らないのなら、おれが教えてやればいい。一言も聞き漏らさないように一生懸命に聞いているシルフィンを見ながら、そう思った。


郷にはいらば 


「・・・とまぁ、プレゼントっていう贈り物をする日なんだが、生憎お前には何もない。」
「そうですね、来年からは気を付けます。」
「まぁ、知らなかったんだ、仕方がないだろう。そこでだ、シルフィン。おれ限定で今でも間に合うプレゼントが実はあるんだ。」
「え。ほ、本当ですか!」
「あぁ、首の辺りに大きなリボっっっっ・・・ったぁ!!何すんだよベンちゃん!」
「そいつはアンタが悪い。・・・シルフィン、来年からちゃんと祝ってやってくれ。」
「あ、はい。」

そう言った後、私は聞こえないように呟きながら、首を傾げた。


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