寡黙な詐欺師 | ナノ


柔らかく浸透する


とすとすとすとす
カラカラ
とすとす
カラッ

「わっぷ」

いきなり目の前の人物が止まる。

「何ですか、ジンベエさん?・・・何か見えたんですか?」
「シルフィン、おまえさんは何でわしに付いてくる?」
「え、それは・・・ジンベエさんが「構わん」って言ったから?」

そう言うと、ジンベエさんは困った顔をする。(しまったな、そんな顔をさせたくはなかったんだけれども。)

「こわくはないんか?」
「怖い?」

私はその事を聞いて、訳が分からなくて首を傾げる。確かに初めて会った人に対して(まぁ、一方的に知っていたけど)、こんな失礼な態度を取って良いものなのかとは思うが。

「こわい、ですか・・・。」
「わしは七武海じゃし・・・魚人でもある。」
「存じ上げておりますが。」

ジンベエさんでなかったら、柄にもなく顔を真っ赤に染めて「街を一緒に見ても良いですか!」なんて言う私の告白はどうなるのだろう。

「知っててどうして、シルフィンは「いえ、知っているからこそです!!」

そうきっぱりというと、彼はまた困ったように笑う。(嗚呼、私はどうすれば良いんですか。)

「あの。私、ジンベエさんだからこそなんですよ。」

憧れている人、大好きな人。言いたいことはたくさんあるけれど、それを言葉に出来ない。

「人間、嫌いかも知れませんけど。人間が魚人を嫌っているかも知れないけど。」

こんな半端者、嫌いかも知れないけど。

「私、ジンベエさんのこと、好きです。」
「そうか・・・・・・・・・シルフィン。」
「はい。」

私の頭を撫でた後、ジンベエさんは私の方を見ながらこう言った。

「良かったら、もう少し見て回るか?」
「!!・・・っはい!」

足音はまちまちだけど、横を見るとジンベエさんがいる。そんなジンベエさんと会えたことを、私は心から嬉しく思います。


柔らかく浸透する  


(あ。そういえば今度、会議在るそうじゃないですか。そこでまた会えると良いですね。)
(・・・え、おまえさん・・・え?)
(あ。申し遅れました。私怪盗『赤時計』と申します、以後お見知り置きを。)
(え?)

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