白い世界で 偶然だったが、赤時計屋に会った。向こうは俺のことをまだ気づいていないようで、白い雪の上を俯いて、しかも笑いながらうろうろ歩いている。端から見れば、気味がわりぃ。 「おい、赤時計屋。・・・おい・・・おい、赤時計屋。」 「!!・・・び・・・ビックリするじゃないですか。急に現れないでくださいよ。」 しかも私、赤時計屋なんて呼ばれたくはないです、とふてくされながら彼女がそう言うのでシルフィン屋と言えば、少し頬を染めながらシルフィンは、まぁそれなら良いですと呟いた。 「何、してたんだ?」 「・・・ああ。雪、みてたんです。ここ、冬島じゃないですか。」 シルフィン屋の相変わらず脈絡のない話し方に口元を上げながら、ふと疑問に思う。 「・・・ワノ国には四季があったはずだが・・・テメェはワノ国の人間じゃないのか?」 それを聞いて、困ったように笑いながらシルフィン屋は答えた。 「私の所、あまり雪が降らなかったんですよ。しかも、色々あって他の島とかに点々としてましたし。」 まぁ、今もそう変わりませんけど。・・・だから、雪、あまり見てないと思うんですよ。と、シルフィンはいささか他人事のように話す。 「おれはノースの出だからな。・・・お前の感覚はよくわからねぇ。」 「そうなんですか?まぁ、ノースの方からしたら、危ない物に見えるんでしょうね。やっぱり。」 「まぁな。氷とかになると、滑ったりしてあぶないからな。・・・俺は好きじゃなかったな。」 俺の返答にへぇと返したシルフィン屋の声が雪に吸収されて、周りの音が消えて無くなる。この感じが、俺はあまり好きじゃない。何も喋らずにぼぉっと立っていると不意に、シルフィン屋が口を開いた。 「月並みなんですけどね。なんか・・・世界、消えちゃったみたいですよね。」 「どういうことだ?」 「雪の降る音しか聞こえないんです。」 さくさくさくさく、そう呟いた後、またシルフィン屋はそこら辺を歩き回ったり、雪を近くで見るようにしゃがんでいる。 「なんか、誰もいないみたいで。毎日こうだと寂しいかもしれませんね。」 「シルフィンや「でも。」 「でも・・・やっぱり、私は好きですよ。雪。」 「・・・そうか。」 「はい。降っている時も綺麗だし、雪化粧をしている景色も凄く綺麗で。」 「・・・。」 「しかも、一人だけじゃないって、気づかせてくれます。」 ほら、と言って指を指すのは、うっすらしか残っていない大きさの違う足跡の列。 「ローさんがいるから、私、今寂しいなんて感じません。」 そう言って、おれの帽子の雪を落とすこいつが嫌いだ。こう言うときだけおれの名前を呼ぶのも。おれの調子だけ狂うだけ狂わせといて、自分が何をしているのか気づいちゃいない。そんなこいつがおれは嫌いだ。しかしそれでも。 君がいるから 「・・・・・・シルフィン屋となら、2人になっても良いかもしれねぇな。」 「・・・2人?あぁ、彼らは人じゃないですからねぇ。ある意味2人きりかぁ。」 そう言って頷いているシルフィン屋の視線を追ってみると。 「あ、気づきました!?頑張ったんですよ!!かまくらも作りたかったんですが、作り方、知らないんです。」 こっちを見て照れくさそうに笑いながら、そいつらのことを話す。何で気づかなかったんだろうか。大中小揃っているあの、3体の雪だるまに。 「あ、これさっき作ったんです・・・ゆきうさぎー。」 そう言って、真っ赤な手の上に赤い目をしたゆきうさぎ(ワノ国ではこう言うのもあるのか。)を自信満々に見せてくる。 「・・・シルフィン屋。」 そう言ってシルフィン屋の肩を掴むと、「はい?」と気の抜けた返事をする。前言撤回。やっぱりおれ、こいつと居たくねぇ。 (・・・あいつら壊してくる。) (え、なんでですか?駄目に決まって・・・うわぁぁあああぁ!!ちょっ、まっ、ああぁぁぁああ!!!) back |