自分という証 「シルフィン、本気で止めてくれ!」 「嫌だ、止めるな。」 「別に、私の身体なんだから、何したって私の勝手ですよね?」 私を止める人たちを、睨みながら呟いた。 そう呟いた私の後ろに、誰か居るなんて気づかなかった。 「シルフィン、本気で止めろ。今すぐそれを降ろせ!」 それ、と言うのは私の手に握られている、何処にでもありそうな普通のナイフ。青ざめていく周りの顔をもう一度睨んで、「い・や・だ。」と呟いた。そして。ゆっくりと片目を閉じて、ナイフを顔につけようとすると。 「ああああああ!!シルフィン、もうやめろぉぉぉぉお!!」 船員の一人は私を止めようと、こっちに飛び込んできた。(そっちの方が危ないとは、やっている自分には言えなかったけれど。) それをさっと避けて、さっきよりも慌てている船員に向けて声を出した。 「全く、私が顔に傷を付けようが、付けまいが別に関係ないでしょ・・・う?」 が、どんどん声が疑問符に変わっていく。何故かというと、周りの奴らは青ざめた表情で、私を指さしてくるから。 「うし・・・ぅしろ・・・「後ろ??」 「よぉ、シルフィン。顔に・・・なんだぁ?」 ゆっくり後ろを振り返ると、そこには目が笑っていない未来のお頭、もといシャンクスさんが立っていました。 「シルフィン。」 「・・・はい。」 持っていたナイフは取り上げられて、私はシャンクスさんの足下に正座をしている。 「お前がそうなっている理由、解るよな?」 「・・・解りますけど、解りません。」 「シルフィン?「あわわわ!!!だって、だって!」 「だって?」 そう聞かれて、私は『あー、うー。』と小さく呟きながら、おそるおそる口にする。 「だって、私。もうそろそろ離脱するんで。」 ほら、シャンクスさんの船員なんですよー。みたいな証が欲しいじゃないですか。そう呟くと、彼は不思議そうに首を傾げた。 「離脱しても、他の船に乗っても、お前は俺の家族みてぇな存在だろ? 証なんてなぁ・・・。」 「ふ、不安になるんですよ!何か、一人みたいで・・・だから。」 何か、証を下さい。そう言うと、シャンクスさんは困った顔をして、私に近づいた。左肩に巻かれた赤いバンドを見て、私は凄く嬉しくなる。 「なんだ、そんなんで良かったのか?」 「ありがとうございます!・・・後生大事にします!」 大げさだなぁ!と彼は複雑そうに笑うが、私にはとても大事な物だ。大事にしよう、そう思った。 夕食後ベンさんに会ったので、取りあえず昼間のことを謝っておく。(多分、お頭呼んだのこの人だろうし・・・。) 「まぁ、おわっちまった事だ。きにすんな。」 「はぁ、すいません。」 あたまをぽんぽん叩かれて、「もうこんな事すんなよ。」と言われる。 「しませんよー。」 「シルフィンの顔に傷が付いたら、頭におれが殺されちまう。」 「そんなことないですってー。・・・でも、コレで大手を振って離脱できます!!」 「大手を振って、なぁ。」 これ、とさっきシャンクスさんから貰った赤いバンドを見せるとベンさんは、少し考えるようにして、私に言った。 「頭、ホントは渡したくなかったのかも知れねぇなぁ。」 「?」 実は離したく無いんです。 「そう言えば、どうして顔に傷を入れようと思ったんだ?」 「あぁ、人から何か貰うって言うのが私の選択に入ってなかったので。」 すると、彼は不思議そうにこちらを見るので、私はにこやかに笑いながら言った。 「家族以外から物を無償で貰ったことがなかったんで、考えなかったんですよ。」 「シルフィン・・・「ちなみに、選択肢2つありましてね。1つは顔に傷で、2つ目は片腕切り落とすだったんですよー!!」・・・笑い事じゃネェ。」 あの時、頭が来てくれて本当に良かった。と彼が呟いたのを聞いて、私は反論する。 「片腕はお頭の意思なんで、私がそんな事したらいけないと思ったんですよ。偉くないですか!」 (・・・お前の国の人間はみんなそんな奴ばっかなのか?) (あ、みんな切腹してるとか言いたいんですか!?違いますからね!) ((切腹しようと思ったことあるのか・・・??)) back |