寡黙な詐欺師 | ナノ


紅葉おろし


「ドレークさん、こんにちはー。」
「・・・シルフィン。」

振り向けばいつの間にか甲板の手摺りに腰をかけているシルフィンの姿が見えた。

「近くにドレークさんの船が見えたので、ちょっと遊びに来てみました。」
「おれも一応海賊なのだから、あまり簡単に船に乗り込んでくるのは・・・。」
「それでですねー、お土産が「シルフィン。頼むから人の話を聞いてくれ。」

そう言うも聞かずに鞄から取りだして見せてくるのは、紅い葉。

「紅葉・・・か?」
「あ、はい!」

先程いた島で丁度見かけたものですから、悪いとは思ったんですが、拝借して来ちゃいました。 空いている手で枝をなぞりながらそう答える彼女を見て、シルフィンらしいと、小さく笑ってしまった。

「・・・で、ですね。ドレークさんがお誕生日だったという話を聞きまして。」

それを聞いて、おれは少し前にあった出来事を思い出しながら頷いてみせる。

「初めて聞いたので、何もなくて・・・なので。」

別にそんなことは気にしなくても構わないのに。と思いながら苦笑してしまう。     
「確かドレークさんはよく本を読む人だったと思うので、これで、栞でも作ってください!!」
「・・・シルフィン・・・自分の誕生日プレゼントを自分で作るのか?」
「あー・・・まぁ、そうなります、ね。」
「・・・・・・・くっ。」

小さく出た言葉が引き金となって、シルフィンには悪いが、盛大に笑ってしまった。

「・・・・・・そんなに笑う位可笑しかったですか。」
「いや・・・その、すまない。」
「別に、良いですけど。」

そう言ってそっぽを向けば、後ろから頭をくしゃりと撫でられる。

「シルフィン、ありがとう。」
「・・・っ、はい!」

振り返れば、はにかみながら頭を撫でてくれているドレークさんがいて。それだけで幸せになってしまう自分は単純だなぁ、と思いながら返事を返した。


紅葉卸し 


シルフィンは積み重なった本に視線を向けている。

「上手く、できると良いんですけど・・・。」
「まぁ何とかなるさ。」

そう返しながら、別に、私は来てくれただけで嬉しかったんだけどな。と呟けば、困ったように笑うシルフィン。 欲を言うならば、こんな日が毎日続けば良い。そんな言葉も全て本の下敷きにしまい込んだ。

(いや、本当はアレでも良いかなって思ったんですけど・・・アレはスモーカーさんにダメって言われましたし。)
(『アレ』って何なんだ?)
(何でも言うこと聞くよ券・・・です。5枚綴りの。)
(・・・・・・・シルフィン、それを一枚だけでも良い。くれないか。)
(え、でもさっきドレークさん「来てくれただけで嬉しい」って・・・。)
(シルフィン。)
(・・・わ、分かりました。今から作ります・・・。)


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